危険な道:第6章:既知の及び疑われている発達神経毒物19 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・神経毒性のメカニズム
胎児のアルコール被ばくが脳重量の減少や
ある種の細胞の選択的減少・細胞の成熟障害
・シナプス発達の遅れを起こすことが、動物
の研究が明らかにしている。130,131 いくつ
かの異なるメカニズムがアルコール毒性に寄
与しているのだろう。それには、細胞接着分
子への妨害よる細胞相互関係の妨害、132 酸
素供給の減少の結果としてアミノ酸やブドウ
糖・その他の栄養素の胎盤輸送減少、133 シ
ナプス伝達の異常134がある。
その他の溶剤
人間の研究
エタノールと比較して、ほかの溶媒の脳発
達と機能への影響について良く分かっていな
い。溶剤への職業被ばくは、成人労働者で末
梢と中枢神経系への影響を生じ、また子供で
中枢神経系の異常を含む先天性異常に関連す
る135,136。しかし、母親が妊娠中に溶剤に被
ばくした子供の神経発達に関してほとんど情
報が利用できない。1 研究が、少なくとも妊
娠の一部に職業性溶剤被ばくをした母親の子
供の神経発達を3 才で調べた 。注意や行動 137
・社会性・活動性・学習に関して有意な影響
は見られなかった。発達の出来事は被ばく群
と非被ばく群で同じであったが、非被ばく子
供と比較して妊娠を通して被ばくした子供で
歩行開始が遅れる例外があった(13.3 か月対
12.2 か月)。この発見は意味がはっきりしない。
というのは、妊娠期間の始めの 3 分の 1 ある
いは 3 分の 2 のみ被ばくした母親の子供は、
被ばくしない子供より実際に速く歩き始めた
からである (10.8 か月、11.6 か月、12.2か月)。
この研究で母親の被ばくは実際には測定され
ず、特定の溶剤と発達の結果を関連づける試
みはなされなかった。そのため、この単一の
研究からはっきりした結論を出すのは誤解を
与えるだろう。
トルエンは接着剤やインキ・ペンキ・クリ
ーニング剤・ガソリンに使われている有機溶
剤である。妊娠中に母親が接着剤をかぐ(注
:シンナー遊び)ような重度の被ばく曝後、
子供は FAS に似た頭蓋顔面異常をもって生ま
れるだろう。138 追跡研究は、成長遅滞と、
認識や会話。運動技術の永続的障害を示した。
それ以下では人間で神経発達影響がないトル
エンの被ばくの閾値レベルが存在するかどう
かは知られていない。トルエンの発達影響は
アルコールの影響に非常に似ているので、一
部の研究者は毒性メカニズムは同じであると
信じている。139 人間では良く研究されてい
ないが、アルコールと同じように比較的わず
かなトルエン被ばくでさえ、微妙であるが重
大な影響を神経認識発達に対して持っている
のがこのことであろう。
動物での研究
動物での研究もトルエンに対する間欠的な
重度の出生前被ばくの神経行動学的結果を示
している。 妊娠しているマウスに 200, 400,
2000 ppm (ppm) のトルエン吸入により、妊
娠 12-17 日に 1 日 3 回 60 分間被ばくさせ
た。最も高い被ばく群から産まれた子どもは、
立ち直り反射や握力・反転スクリーン inverted
screen の行動試験で成績がより悪かった 。 140
妊娠 7-20 日に吸入により1日 6 時間、1800
ppm のトルエンに被ばくしたラットはモーリ
ス水迷路Morris water maze で試験した時、学
習の障害のある子供を産んだ。141米国のトル
エンに関する職業安全限度は週40 労働時間に
ついて200 ppm が許されている(職業安全限
度は実施されないであろう。ここに出した値
は実験データとの比較目的のためだけである)。妊娠と授乳の間16, 18, 400 mg/リットル
(ppm)を含む飲料水を与えたマウスは、運動
技術(回転棒試験成績)に欠陥のある子供を
産んだ。142 最高被ばく群はオープンフィー
ルド活動で慣れの低下を示した。飲料水中の
トルエンに対する最大汚染レベル(MCL)は
1.0 mg/l (ppm)である。
妊娠と授乳を通して、312, 625, 1250 mg/l
(ppm)のトリクロロエチレンを含む水を与え
たラットの子が研究された143。どのレベルで
も被ばくした生後 60 日と 90 日の雄ラットで
探索行動が増加した。運動の活発さ(running
wheel)は1250 ppm のトリクロルエチレンに
被ばくしたラットで高かった。環境保護庁の
トリクロルエチレンに関する飲料水 MCL は
0.005 mg/l (ppm)である。交尾前に2 週間、週
に5 日、1 日6 時間、吸入により1800 ppmの
トリクロルエチレンに被ばくしたラットから
産まれた子は体重が減少したが、行動異常の
証拠はなかった。144 妊娠を通して被ばくしたラットの子は、活動レベルが少し減少した。

米国の職業安全限度は週 40 労働時間で 100ppm のトリクロルエチレン被ばくを認めている。
妊娠7-20 日で、6時間/日、500 ppm の吸入によるキシレン被ばくは、ラットの子供で脳重量減少と運動成績(回転棒試験)や学習・記憶低下(モーリス水迷路)を招いた145。500mg/‰は 115 ppm に等しい。別の研究で妊娠期間を通じて、週5 日、61 日6時間、500 mg/‰のキシレンに被ばくしたラットの子孫は、オープンフィールド試験で水平運動減少と脳や心臓・肝臓・腎臓の構造変化を示した146。

50 mg/‰では、子供は成長遅滞と骨格異常を示した。米国の職業安全限度は週40 労働時間で100 ppmのキシレン被ばくを許している。
週6 日、1 日に7 時間25 と50 ppm のスチレンに被ばくした幼弱ラット(生後 1-48 日)は有意な体重増加の遅れ、オープンフィールド試験で活動減少、回避行動減少を示した。147

米国のスチレン被ばくの職業安全限度は、週40時間に対して50 ppmが許されている。
別の研究は、出生前スチレン被ばくと食物のタンパク質不足との間の重大な相互作用を示している。148

妊娠中に蛋白欠乏食とスチレン(100 mg/kg/日) を投与したラットは、スチレンだけに被ばくしあるいは低蛋白食のみを含む対照と比較して、低脳重量をもちアンフェタミン誘導多動性が著しく増加した子を産んだ。

結論
まとめると、胎児期の比較的少量のアルコール被ばくが正常な脳の発達をかき乱し多動性や注意と学習障害、記憶障害を起こすことを、多くの研究が報告している。

胎児アルコール症候群のリスクの大きさは遺伝および環境要因とその相互作用に依存している。

妊娠中のトルエンに対する大きな吸入被ばく(接着剤吸入)も、構造的脳障害を起こすと同様に、胎児の脳発達にひどい影響のリスクをもたらす。

胎児脳発達に関する少量被ばくの影響は不明である。職場や消費製品で遭遇するほかの溶剤は正常な脳発達をかき乱す可能性を持っているが、一般に高い被ばくレベルにおいてである。

しかし、職場で認められているレベルあるいはそれより下でキシレンとスチレンは学習や行動・運動技術・活動レベルを胎児被ばく後に変化させることを動物実験が示している。

揮発性溶剤は消費製品中に存在することが多いので、趣味や家庭での過剰被ばくが、特に密閉したり換気が悪い場所で使う場合起こりうる。

栄養要因も溶媒被ばくの神経発達影響に影響する。

その他の懸念される化学物質
発達神経毒性の評価は多くの化学物質でないが、2 種類の大きく異なる物質が意図的に水や食品に添加され、それによって一生毎日大きな集団を被ばくさせるので、特に取り上げるに値する。

食品や水道を通じて全集団が化学物質に被ばくする場合、被ばくを開始する前に、そして新しいデータが利用できるようになるので、徹底した安全評価が重要である。