・溶剤
? 発達中の有機溶剤被ばくは、構造的先天性欠損症や多動・注意欠陥・IQ 低下・学習と記憶の欠陥を含む、幅のある障害を引き起こすだろう。
? 妊娠中の 1 日に 1 回という少ない飲酒が、子供で衝動的行動や、記憶や IQ・学校での成績・社会適応の持続する低下を招くだろう。
? 動物と限られた人間での研究は、かなり大きな被ばくが必要であるが、妊娠中にトルエンやトリクロロエチレン・スチレン・キシレンのような一般的な化学物質に被ばくすると、子供で学習欠陥や行動の変化を起こすことを明らかにしている。
被ばく経路
有機溶剤は消費製品や趣味・産業で広く使われている。
大規模産業発生源から環境への一部の有機溶剤放出は、毒物放出インベントリー(TRI)で報告されている。
例えば、1997年に 11500 万ポンドのトルエン、7500 万ポンドのキシレン、4600 万ポンドのスチレン、2100万ポンドのトリクロロエチレンが、空気や水、大地に、毒物放出を報告することが命じられている大規模産業によって放出された。
エタノール(アルコール)エタノールの神経発達影響は広汎に研究されてきた。
専門用語「胎児性アルコール症候群」(FAS)は、慢性アルコール中毒女性の子供で奇形を記述するために1973 年に最初に作られた。120
しかし、胎児のアルコール被ばくの結果はずっと以前から知られていた。影響を受けた子供は、障害の程度はかなり異なるが、成長と発達の遅れを伴って、入り交じった頭蓋および顔面や、四肢、心血管系の欠損症を示す。
認識機能は正常から重度の崩壊まで変化するが、肉体的特徴はそれとは別に正常から明らかな異常まで変化する。
米科学アカデミー胎児性アルコール症候群委員会は、胎児のアルコール関連以上に対して 5 つの診断範疇を提案している。121
1)FASの診断と母親のアルコール被ばく歴の確認
2) FAS の診断と母親のアルコール被ばく歴の確認なし
3)アルコール被ばくの確認がある不完全なFAS
4)アルコール関連先天性異常
5)アルコール関連神経発達障害
臨床的な異常の幅は、恐らく妊娠中のアルコール被ばくの時期や期間・レベルの差を反映しているのであろうが、種々の障害の傷つきやすい時期は良く分かっていない。
妊娠第1三半期に被ばくすることが、FAS で見られるはっきりした肉体的顔面異常におそらく必須である122。
第2,3 、第 三半期のアルコール被ばくは神経回路を変化させる。第3 三半期は、アルコール被ばくの結果としての脳障害に特に傷つきやすい時期である。123
胎児へのアルコール影響は、全アルコール消費量より、母体のピークとなる血中アルコールレベルに関係し、どんちゃん騒ぎの飲酒は長期間に同量飲むよりも有害であると思われる。124
ある研究は、1日に平均で純アルコール 0.5 オンスで閾値影響を発見した。125
胎児被ばくの臨床的現れは、多動と注意欠陥である。126
記憶や情報処理速度・計算機能も悪影響を受ける。127 摂食障害やおねしょ・睡眠障害・会話の遅れ・不安・抑うつ・精神兆候も生じる。
FAS の子供で認識障害と精神遅滞の可能性は高いが、精神機能は様々で正常のこともある。
出生前に激しくアルコールに曝された双子16組の研究は、一卵性双生児5 組と二卵性双生児11 組中7組で、胎児性アルコール症候群に一致することを発見した。128
遺伝的に決まっている母親のアルコール代謝の変化も子供の FAS の可能性に影響する。
なぜなら、アルコールの代謝物、アセトアルデヒドはこの疾患に大きく関係すると考えられているからである129。
これらの観察は、遺伝因子と良く知られた神経発達毒との相互作用を証明する。
胎児のアルコール被ばく結果の研究で遭遇する困難の 1 つは、母親の乏しい栄養摂取や出生前の注意の遅れ、喫煙を含む母親の薬物乱用がいっしょに存在することが多いことである。
これらの因子は、アルコールだけによる臨床的特徴を抜き出す努力を複雑にする。
さらに、摂食障害と睡眠障害・行動の困難・認識機能や注意の障害は、母子関係に悪影響を与えることが多い。
このように、どの位の将来の障害が胎児アルコールによるものか、そしてどの位が幼児期と早期小児期中の社会因子によるものかを知ることは困難である。