・木造家屋改築工事で、かび取り剤により中毒となる
被災した大工Aの所属するB社は、主として木造家屋の建築を請け負う会社である。災害の発生した建築工事は、木造平屋建ての個人住宅の増改築工事であり、この工事にともなった既設建物の柱、壁、軒の裏側等の木部の漂白・カビ取りの作業であった。
災害発生当日の朝8時30分ごろ、B社の事業主、事業主の弟、そしてAの3名が作業現場に到着するとすぐに、事業主とAの2名は午前中の作業として予定していた室内の柱、天井部分の漂白・カビ取り作業に取り掛かった。換気のため窓を開放し、亜塩素酸ナトリウム23%のカビ取り剤(溶媒は水)を使用法に従い8~9倍に水で薄めて刷毛塗りで行ったが、手袋、呼吸用保護具は使用していなかった。
Aは、午前中の作業中から咳が出るようになり同時に鼻づまりを感じていたが、そのまま作業を続けていた。
12時頃から1時間程度の食事、昼休みの後、午後の作業を開始したが、事業主は引き続き室内の作業を行い、Aと午後から作業に加わった下請けの作業者Cの2名は屋外の窓枠、軒裏部分の作業を行った。
最初は屋内の作業と同様に薄めた液を刷毛で塗っていたが、Aは途中から作業能率を上げようと原液を動力噴霧器を用いて作業を行った。
Cはそのまま刷毛りで作業を続けていた。
軒の裏部分は脚立を使用して作業を行ったため、Aは頭上で噴霧器を操作する格好となり、木部に吸着しない余剰の液が霧状のまま顔面にかかる状態であった。
Aは、作業にあたって長袖長ズボンの作業衣にガーゼマスクを着用していたが、この午後の作業でガーゼマスクはカビ取り剤でびしょ濡れの状態となっていた。
午後3時頃から30分程度の休憩を取った後作業は午後7時ごろまで続いた。
作業が終了してもAは咳が止まらなかったため、病院で治療を受けた。
本災害は、亜塩素酸ナトリウムを含むカビ取り液を吸入したために起こったものであり、この原因としては以下の点があげられる。
1 カビ取り剤の適正な使用方法(水で希釈し、刷毛塗りする。)に従わず、原液を動力噴射機器を用いて塗布したこと。
2 適切な呼吸用保護具を備えておらず、これを使用しなかったこと。
3 作業者、事業者ともにカビ取り剤に含まれる亜塩素酸ナトリウムの危険有害性についての知識が十分でなかったこと。
1 使用方法に従って液を、水で希釈した上で刷毛を用いて塗布すること。
2 有効な呼吸用保護具、ゴム手袋等を使用すること。また、屋内で用いる際には換気を十分に行うこと。
3 事業者は、使用する化学物質の危険有害性を十分に把握するとともに作業者にこれを周知徹底すること。また、安全な作業方法について検討すること。
runより:Aさんはよく生きていたなぁと思うような事例です。
化学物質を甘くみちゃいけませんね。