・アルミダイカスト製品の洗浄作業中に有機溶剤中毒
この災害は、アルミダイカスト製品の塗装工場で、トリクロロエチレンによる洗浄作業中に発生したものである。
洗浄作業は、アルミダイカスト製品を洗浄用バスケットに入れ、ローラーコンベアで入り口まで運ぶと、通常は自動で洗浄槽を通過して出口に送られるようになっている。
災害発生当日、被災者は、定時の午後5時から2時間程度の残業を命じられ、定時までの作業と同じ洗浄作業に従事していた。
被害者の上司は、別の作業を行なっていたが、トリクロロエチレン洗浄機の傍を通りかかったところ、洗浄機に付属している蒸留装置から煙が出ていたため、トリクロロエチレンの追加補給を指示しようと被災者を呼んだが返事が無かった。
不審に思った上司が、洗浄済みのバスケットが出てくる所に行ってみると、洗浄機は止まっていて、出口は開き、切り替えスイッチは「手動」になっていた。
そこで、洗浄機の出口から中をのぞいてみると、被災者が洗浄機の中で身体の右半身を下にして、うつ伏せ状態で倒れているのが発見された。
この災害は、アルミダイカスト製品の塗装工場で、トリクロロエチレンによる洗浄作業中に発生したものであるが、その原因としては次のようなことが考えられる。
災害の直接の原因は、洗浄用のバスケットが洗浄機内に二つ滞留するトラブルが発生したため、有機溶剤の蒸気が充満している洗浄機内に立ち入り急性中毒となったものと考えられる。
間接的な原因としては、次のようなことが考えられる。
1 安全衛生管理体制の不備2 労働衛生対策の不実施
[1] 作業環境測定の未実施、環境改善の未実施
[2] 特殊健康診断の未実施
[3] 防毒マスクの管理の不徹底
3 機械設備の設備不良等
4 作業者にする教育の未実施
この災害は、アルミダイカスト製品の塗装工場で、トリクロロエチレンによる洗浄作業中に発生したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。
1 安全衛生管理体制の整備等
安全衛生推進者の選任、作業の指揮命令の明確化等を図る。
2 有害物・作業対策の充実
作業主任者の確保、安全衛生教育の実施、作業環境の測定と局所排気装置の設置等を行なう。
3 機械設備の点検整備の徹底
機械設備、局所排気装置等については、定期的に点検する。
度々故障するような機械等については、抜本的に検討する。
4 作業マニュアルの整備等
作業マニュアルを定め、繰り返しの教育、訓練を行なう。
また、点検、修理等非定常的な作業についても作業マニュアルを定める。
5 緊急時対策の徹底
災害等の事態が発生した場合の連絡体制の整備、避難訓練等の実施等を行なう。
業種 その他
事業場規模 16~29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 高温・低温の物との接触
被害者数 死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 設計不良
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 保護具を使用していない
runより:今回は不幸な事故で死亡しています。
「発生要因(管理) 保護具を使用していない 」
この文字を見ると悲しくなります、化学物質過敏症患者も防具は使うようにしてください。