日弁連:電磁波問題に関する意見書7 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・(4) 近年のその他海外での動き
以上のように,電磁波に関する厳しい規制を行う国が存在する上に,近年の欧米諸国では,予防原則に基づき,1998年ICNIRPガイドラインを否
定する動きも出ている。
代表的な例では,2008年9月4日,欧州議会が「欧州環境衛生行動計画
2004-2010の中間評価に関する決議」を522票対16票(棄権7票)
で採択した15。

この決議は,電磁界に関して,「一般公衆に対する電磁界曝露限度は,EU理事会勧告(1999/519/EC)以降,一度も調整されておらず,情報通信技術の進展,欧州環境庁や各国の勧告を考慮しておらず,妊婦や新生児,子どもといった脆弱な集団の問題を扱っていないので,時代遅れである。」などと述べ,同勧告の修正を求めている。
また,2009年4月,同じく欧州議会は,ベルギーのフレデリック・リエスが作成した「電磁界に関連する健康上の懸念」と題する報告書(以下「リエス報告」という。)についての決議を圧倒的賛成多数で採択した16。

その中では,携帯電話塔などの設置制限,一般市民への情報提供,EU理事会勧告(1999/519/EC)の科学的根拠と妥当性の見直し等を要求している。
また,日本もオブザーバーとして参加する欧州評議会の議員会議において,2011年5月17日に「電磁場の潜在的な危険性と環境におけるそれらの影響」と題する文書が採択され17,その中では,電磁波について予防原則を適用すべきだとした上で,「国際非電離放射線防護委員会によって設けられた電磁場曝露に対する現在の基準に関する科学的根拠を見直すこと。それは,深刻な限界があり,ALARA原則18を適用し,電磁場照射や放射の熱効果と非熱効果や生物学的影響の両方を扱うこと。」などを勧告している。
ここには代表的な例のみを挙げたが,この他にもICNIRPガイドライン
の見直しを勧告する決議や報告は多数存在している。
このように,欧州では,厳しい規制を採る国が複数存在する上,欧州議会や欧州評議会といった国際機関のレベルでICNIRPガイドラインの見直しが提唱されているのである。
15 http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?language=en&type=IM-PRESS&reference=20080903IPR36136
16 http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?pubRef=-//EP//TEXT+TA+P6-TA-2009-0216+0+DOC+XML+V0//EN
17 http://assembly.coe.int/Mainf.asp?link=/Documents/AdoptedText/ta11/eRES1815.htm

(5) 予防原則の観点からのセンシティブエリアの設定
① 予防原則について
前述の欧州議会や欧州評議会で指摘された予防原則とは,人の生命・健康や自然環境に対して大きな悪影響を及ぼす可能性が懸念されている物質や活動について,たとえその悪影響に対する科学的な解明が不十分であっても,すべての関係者は十分な防護対策を実施すべきであるという考え方である。
この点,当連合会も,2003年10月の人権擁護大会において採択された
「新たな化学物質政策の策定を求める決議」の中でも,予防原則を含んだ立法の提言を行っているところである。
欧州議会の決議等では,加盟国の民意として,複数の研究報告があり科学的に必ずしも明確ではない電磁波の分野において,より安全や健康に配慮する形で価値判断するという傾向があるように見て取ることができる。
② 予防原則の観点からの安全対策
予防原則に基づく規制は,要するに科学的に不明確な点に関する合意形成の問題,すなわち,科学的に必ずしもよくわからない点についてどのように取り扱うことに決めるのかという問題であると思われる。

したがって,電磁波に関する情報の公開と被害実態の調査は,議論の大前提とされるべきである。
その上で,可能な限り市民参加を制度化して議論が進められるべきであり,またこれと並行して,暫定的であったとしても,子どもや妊婦などの弱者への予防的対応や,できるところからの予防的な対策とそのための支援策が講じられて良いように思われる。

必ずしも現時点において科学的因果関係が明確でなくても,情報の公開と実態調査を求め,予防的により強い規制を検討するという価値判断は,十分にあり得ることではないかと思われる。

前記した欧州での議論の内容を踏まえればなおのことである。
特に,電磁波は,急激な科学技術の進歩とともに,生活環境の中における
強度が増大しており,その健康影響に関する研究が増大の速度に追いついていないため,特に予防原則の観点からの安全対策が重要となる。
③ センシティブエリアの設定
前述の国立がん研究センターによる子どもに対する携帯電話の使用に対する警告や,欧州議会,欧州評議会の決議で子どもに対してより強い保護を求めていることに見られるとおり,子どもや妊婦,病人など電磁波の影響をより受けやすいと考えられる人たちに対しては,予防的措置の観点から,より厳格な規制を検討するべきである。
この点,前述のとおり,イタリアではセンシティブエリアを設定して厳格
な注意値を定めているところである。

(6) 小括
以上のとおり,電磁波に関しては,その健康影響を懸念するに十分な研究結果が存在し,欧州では,ICNIRPガイドラインよりも厳しい規制を行う方
向へと進んでいる。
その現状と予防原則の重要性をあわせ考慮すれば,健康影響が懸念される子ども,病人などについては,暫定的に,より厳格な規制を検討するべきである。
そして,その規制を検討する上では,人の健康及び環境を保全するという観点から,中立,公正な組織を設立する必要がある。

18 合理的に達成できる限り低く保たなければならないとすること。(ALARA:As Low As ReasonablyAchievable)


runより:具合が悪いので病院に行ってきます、この話はまだまだ続きます。