日弁連:電磁波問題に関する意見書3 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・2 予防原則に基づく安全対策を実施すべきこと(「第1 意見の趣旨」1(2))
(1) 電磁波が原因であることが懸念されている健康影響
① 研究結果や報告等で示唆される健康影響
まず,電磁波の健康被害が懸念されるようになった背景には,電磁波によ
る健康影響を示唆するような研究結果や報告等が存在するからである。

それらにより示唆されている健康影響としては,以下のようなものがある。

② 低周波(高圧送電線等)と小児白血病
ア 低周波と小児白血病の関係を示唆する研究
電磁波の健康影響について,早くから問題とされていたのは,低周波と
小児白血病との関係である。
まず,電磁波による公衆への健康影響が問題になったのは,高圧線近く
での小児白血病の増加を指摘したワルトハイマー(米)の1979年の疫学
論文「電線の形状と小児ガン」と,これを追試したニューヨーク州送電線
研究所の支持(1987年)によるといわれている。

その後,1993年,スウェーデンのカロリンスカ研究所が,0.2 μマイクロTテスラ以上の曝露で小児白血病が2.7倍に増加するという報告を出している。

また,日本でも,兜真徳氏らによって,文部科学省科学技術振興調整費を活用して行われた「生活環境中電磁界による小児の健康リスク評価に関
する研究」(1999~2001年)(以下「兜報告」という。)では,子ども部屋の平均磁界レベルが0.4μT以上だと小児白血病の発症率が2.63倍に増加するという,他の疫学調査とほぼ同様の結果が示された。

イ 国際機関の評価
以上のように,低周波と小児白血病の関係を示唆する研究が多数存在し
ている上,国際機関でも低周波とがんの関連性を認める評価がなされてい
る。
まず,IARC は,2002年,低周波磁界(50/60Hzの商用周
波磁界)をグループ2Bに分類した。
また,WHOは2007年6月,IARCの評価を受け,環境保健基準No.238(EHC:Environmental Health Criteria。以下「クライテリア」という。)を発表した。

そこでは,低周波とがんについての一定の関連性を認めた上で,防護措置として,「慢性影響の存在については不確実性がある。ゆえに,予防的アプローチの使用が是認される」と指摘され,低周波界曝露に関する曝露ガイドラインを制定すべきである,超低周波界曝露の健康影響に関する科学的証拠における不確実性を減らすため,研究プログラムを推進すべきである,などと勧告されている7。


③ 低周波とその他のがんについて2007年に発表されたバイオイニシアティブ報告書8の「公衆のため要約」(翻訳・加藤やすこ他(『市民科学』第15号(2008年4月)以下同じ。)では,「超低周波電磁波への曝露が小児白血病の原因になることは,ほぼまちがいない。」と指摘した上で,低周波とその他のがんの関係についても指摘している。
まず,成人の白血病については,「電磁場曝露」が「関連している」とし,
「小児期の曝露」が「成人後の発病の危険を増加させる」と指摘している。
また,乳がんについて,「作業中の女性に関する研究からの証拠は,10mGミリガウス以上の超低周波への長期的曝露が,乳がんの危険要因であることを強力に示唆している。」と指摘し,結論として,「超低周波は乳がんの危険要因であり,重大な結果を招くその曝露水準は,多くの人々が家庭や職場で曝露している水準と変わらないということである。」,「危険の合理的な懸念が存在し,新規の超低周波基準を勧告し,予防的措置を制定するのに十分な証拠もある。」としている。


7 もっとも,ICNIRPガイドラインの変更を促すような影響は認めていない。また,WHOはファクトシートにおいて,「低周波磁界が小児白血病の発症率を高めるとする疫学研究があるもののその原因が磁界曝露であるかは不確実」としている。
8 「BioInitiative Report: A Rationale for a Biologically-based Public Exposure Standard forElectromagnetic Fields (ELF and RF)」2007年7月,14名の科学者や公衆衛生・公共政策の専門家らによって研究発表された報告書(生物学に基づいた超低周波ならびに高周波の公衆曝露基準のための理論的根拠)。報告書では,超低周波や高周波の電磁波が,上記に掲げたほかいくつかの疾患の原因となる可能性を指摘する。また利害関係にとらわれずに科学文献を合理的に評価してみると,低強度の慢性的曝露による害を規制するためには既存の基準は不十分であったことが分かるとして,ICNIRPのガイドラインやFCC(米国連邦通信委員会)のガイドラインを否定し,超低周波について暫定的な限度値として2mGG 未満(送電線に近い居住空間,子供・妊婦のいる居住空間は1mG),高周波について予防的限度値として0.1μW/c ㎡を提唱している。2007年8月,欧州環境庁(EEA)が報告書の支持を発表した。