・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
http://kokumin-kaigi.org/
・ネオニコチノイド系農薬のミツバチへの影響
大 谷 剛先生
(兵庫県立大学自然・環境科学
研究所生態研究部門)
大谷先生は長年の研究によりミツバチの社会行動を明らかにされてこられた。
今回はその経験からミツバチの花粉媒介による農業への貢献およびネオニコチノイドによるミツバチの被害など様々な視点から講演された。
まずミツバチが現在どの様に農業に利用されているかについて説明された。
花粉媒介ではイチゴ生産に最も多く利用されている(47,280コロニー、2009年農水省調べ)。そのほか自然界では多くの蜂が生態系を支えている。我々市民にとっては食用としての「はちみつ」としてのみ「なじみ」があるが、実際には農業や生態系を支える重要な昆虫の1種である。
講演は以下の順序で行われた。
1、農薬大量散布の影響
空中散布では農薬が薄まった部分が問題である。
そのようなところでは死なない昆虫が存在し、その薄い農薬は「生物濃縮」といわれる過程で食物連鎖の上部にいる動物の体内に濃縮されていく。昆虫は一般に1年以内に世代交代をする。
捕食者が死ぬと、かえって短期的な害虫の異常発生が起きる(リサージェンス:誘導異常発生)。また、世代交代が早いので耐性をすぐ獲得する。1990年前後では殺虫剤に対し504種以上、殺菌剤で150種以上、除草剤では273種以上が抵抗性を持ったと報告された。
また、昆虫は95万種と生物の中では飛び抜けて種数が多く、現生生物の約6割を占める。名前がついていない種を加えると実際には3000万種以上になるという予想もある。
脊椎動物の繁栄は植物のすぐ上(生態的ピラミッド上の)にいる昆虫が支えているのである。
2、ネオニコチノイド系農薬という新型
ネオニコチノイドのイミダクロプリドが1992年に登録され、その後、アセタミプリドやクロチアニジンなどが登録された。
人間など脊椎動物には影響が少ないということで「夢の新農薬」として普及してきた。
国民会議とネオニコ・ネットは11月12日、国際協力機構研究所(JICA研究所)で、国内外の講師4名をお招きして、ネオニコチノイド系農薬国際市民セミナー「ミツバチ・生態系・子どもたちを守るために」を開催し、私たちの身の回りに溢れるネオニコチノイド系農薬の問題点やヨーロッパでの規制や取り組みについて講演をしていただきました。
その結果、蜂が大量失踪する原因と指摘されるようになった。
ビデオ『ミツバチからのメッセージ』で紹介されたネオニコチノイド系農薬を次に示す。
①イミダクロプリド(商品名アドマイヤー、メリットなど)は野菜の長期防除、②アセタミプリド(商品名モスピラン、マツグリーン、イールダーSG、アリベルなど)は松枯れやシロアリ対策、③ジノテフラン(商品名スタークルなど)はイネのカメムシ防除、シロアリ駆除、④チアメトキサム(商品名アクタラなど)野菜のアブラムシ等防除、⑤ニテンピラム(商品名ベストガード)は野菜のアブラムシ等防除、イネのウンカ対策、動物用医薬品、⑥クロチアニジン(商品名ダントツ)はイネのカメムシ防除に応用されている。
これらの農薬は農業のみならず家庭にも忍び込んでいることを忘れてはならない。
2008年8月18日には大谷先生自身が蜂群崩壊症候群(CCD)に遭遇しておどろいた。この現象は短期間に大量の蜂が失踪する現象である。40年以上の養蜂歴で初めての経験だった。
その原因については複合汚染説が唱えられ、論点がぼかされてきた。しかし、ネオニコチノイド系農薬が原因となって免疫力低下となり、ウイルスやダニに犯されるようになったとも考えられる。
博物館養蜂場で2009年8月6日に採取したセイヨウミツバチ花粉団子の花粉の種類はイネが68%、サルスベリが23%、その他であった。圧倒的にイネが多い。
この時期は他の花が少ないので、仕方なしに風媒花のイネにも行くのだ。カメムシによる斑点米の発生を防ぐためにこの時期に農薬をまくため、蜂に打撃をあたえることになる。