筏(1998)による〔『環境ホルモン』7 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・●コルボーンらの主張
 コルボーンらが『奪われし未来』を執筆した最大の動機は、おそらく、医薬、農薬、工業製品などの特殊な物質のみでなく、私たちが日常的に用いている家庭用品にまで環境ホルモンのふくまれている可能性が高い、ということを広く世の中に知らせることであったろう。

彼女らはつぎのように述べている。
 「乳がん、前立腺がん、不妊症、学習障害。現代社会にすでに蔓延しているこうした病理傾向やパターンの解明にとりくむさいには、ぜひとも以下の点は肝に銘じておくべきだ。

合成化学物質の中には、ごくごく微量であっても、人体に生涯にわたって甚大な影響を及ぼすものがあるという事実はいまなお、科学研究によって次々と立証されている。

人類を脅かしている危険は何も、死や疾病だけに限らないのである。

ホルモン作用や発達過程を攪乱する合成化学物質は、いまや人類の未来を変えつつある。

とすれば、合成化学物質こそ、われわれ人類の運命を握る鍵といえるだろう」

(『奪われし未来』より)
 本書の読者は、合成化学物質が危ないというが、本当に確たる証拠はあるのか、因果関係ははっきりと証明されているのか、どれが危険でどれが安全か、などといろいろな疑問をもっているであろう。

そのような疑念に対してコルボーンらはつぎのように答えている。
 「こうして、正当な判断を下すには、ぜひとも確かな『証拠』が必要だといいはる向きには、『永遠の待ちぼうけ』があてがわれることになる。

現実の世界では、ヒトも野生生物も数十種類の汚染物質に暴露している。こうした化学物質は、協調作用や拮抗作用を複雑に繰り返しており、暴露量よりも暴露する時期のほうが重要になる場合もある。

複雑きわまる現実にあっては、厳密な因果関係をとらえるなど望むべくもないのだ」
 「現在、人類が直面している状況には、万全の処方箋や手ごろな解決策があるとは思えない。

現代文明は、化石燃料と合成化学物質に全面的に依存している。

某化学産業の見積もりによれば、塩素系合成化学物質とそれを含む生産物とで、世界のGNPの45パーセントを賄っているという。

この窮地に陥るのに50年の歳月を要したとすると、ここから脱するには、それと同じかそれ以上の年月がかかるだろう」(ともに『奪われし未来』より)
 今後は、コルボーンらがいうように、本当に「人類は未来へ向けて猛スピードで飛んでいるが、それは無視界飛行にすぎない」ということなのだろうか。