松くい虫防除の農薬空中散布は本当に必要か | 化学物質過敏症 runのブログ

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・松くい虫防除の農薬空中散布は本当に必要か
事務局長 中下 裕子
 1977年、「5年で松枯れを終息させる」との趣旨で、「松くい虫被害対策特別措置法」が5年間の時限立法として制定され、松くい虫防除のための農薬空中散布が全国的に始められました。

しかし、5年はおろか、20年経っても松枯れは終息せず、時限立法は何度も延長され、1997年、同法は廃止され、「森林病害虫等防除法」に吸収されました。その後も農薬空中散布が止まったわけではなく、森林病害虫等防除法に基づいて空中散布が続けられています。
 

松枯れの原因についての林野庁の見解は、マツノマダラカミキリにより運ばれたマツノザイセンチュウがマツの樹体内に侵入することによりマツ材線虫病という伝染病に罹患し、その結果、松が枯れるというものです。

このマツノザイセンチュウの運び屋となるマツノマダラカミキリを殺すという名目で、林野庁は空中散布を推し進めています。
 

しかし、豊橋市やいわき市などの市民グループの調査では、マツノマダラカミキリが見つからず、兵庫県が1994年に実施した「薬剤防除安全確認調査」でも、マツノマダラカミキリの死骸は見つかっていません。

しかも、農薬空中散布をしても松枯れは減少することなく、被害は拡大し続けています。

松枯れの原因に対する林野庁の見解は正しいのでしょうか? 

本当の松枯れの原因は何なのでしょうか? 

本来であれば、松枯れの原因究明や効果対策のため調査・研究を行うべきですが、近年、このような調査・研究はほとんど行われていません。

林野庁の見解に立って、全国で多額の予算をかけて空中散布が実施され続けています。
 また、近年、空中散布に使用される農薬は、人体影響がないという触込みで、有機リン系農薬からネオニコチノイド系農薬に転換してきています。

しかし、ネオニコチノイド系農薬は、ミツバチをはじめ、トンボ、チョウなどの昆虫類や鳥類に壊滅的な影響をもたらします。

加えて、神経伝達物質アセチルコリンの作用をかく乱し、人の脳神経に悪影響を及ぼすこと、特に胎児や小児の発達毒性があることが懸念されています。

ネオニコチノイドだから大丈夫ということは全くありません。
 

このような危険な農薬空中散布に対し、各自治体では見直しの動きが始まっています。

島根県出雲市では、2008年に発生した空中散布後の健康被害を受け、空中散布を中止し、今年あらたに「松枯れ対策再検討会議」を設置して松枯れ対策の検討を進めています。

長野県では、2010年に「農薬の空中散布検討連絡会」を設置し、今年11月、空中散布を実施しないという選択肢を認めた空中散布のあり方を決定しました。
 出雲市の再検討会議の副会長を務める元森林総合研究所九州支所長の吉田成章氏は、農薬空中散布の効果は現状維持のみで、防除を一度止めた後に散布をしても無駄である、松林の崩壊といっても、単純松林でなくなって広葉樹松林混交林になるというだけであるので、防災上重要な松林だけ残して、他は広葉樹への樹種転換をすすめるというかたちで対応する以外に松林を保全する方法はない、との見解を明らかにしています。
 このように、効果も不十分で健康被害を生じさせるような農薬空中散布は即座に止めなければなりません。

松くい虫防除の効果及び対策を検証するとともに、松林を保全する方法を長期戦略に立って住民とともに計画、実施してくことが必要です。