・人間の中毒症状
事故あるいは自殺目的で大量に摂取した場合には次の症状が見られた。
・口の不快感(Talbot et al. 1991)と口腔粘膜の刺激(Tominack et al. 1991)
・吐き気(Lee et al. 2000)
・おう吐(Lee et al. 2000)
・消化管の腐食(Talbot et al. 1991)と刺激(Tominack et al. 1991)
・のどの痛み(Talbot et al. 1991,Lee et al. 2000)
・消化管出血(Talbot et al. 1991)
・食欲不振(Talbot et al. 1991)
・白血病増加(Talbot et al. 1991, Lee et al. 2000,11)
・肺障害(Talbot et al. 1991, Tominack et al. 1991)
・肝障害(Talbot et al. 1991)
・心血管障害(Talbot et al. 1991)
・低血圧(Tominack et al. 1991)
・腎障害(Talbot et al. 1991) と乏尿(Tominack et al. 1991)
・中枢神経系障害(Talbot et al. 1991)
・アシドーシス(Tominack et al. 1991)
・発熱(Tominack et al. 1991)
台湾のHsiao et al. (2008)の報告によると、自殺目的で飲んだグリホサートの影響は複数の系に現れるという。
彼らが観察した症例では、化学肺炎や呼吸不全を起こした。
また急性膵炎も現れたという。
被ばくによる人間での影響
経口摂取しなくとも中毒症状が発現したことが知られている。
イスラエルのベングリオン大学プッシュノイらのグループは、農業労働者で除草剤グリホサート(ラウンドアップ)被ばく後に中毒性肺炎になった症例を報告している(Pushnoy and Avon 1988)。
米国カリフォルニア州は、農薬による労働者の健康障害を報告している。
この報告中で、グリホサートによって全身中毒や皮膚障害・眼障害が起こることが報告されている(CalforniaDepartment of Pesticide Regulation 1999)。
不活性成分の毒性
ラウンドアップは有効成分グリホサートと表面活性剤ポリオキシエチレンアミンを含む。
表面活性剤の毒性はグリホサートの毒性より強いことが知られている。
グリホサートやポリオキシエチレンアミン、ラウンドアップの毒性を、ラットの気管内投与や経口投与して毒性を調べた研究では、グリホサート自体より、ポリオキシエチレンアミン自体及びポリオキシエチレンアミンを含むラウンドアップの毒性が強かった(Adam ett al. 1997)。
アレルギー・過敏性
グリフォサートは光刺激皮膚炎やアレルギー性皮膚炎、光アレルギー性皮膚炎を起こさないとされていたが(Maibach 1986)、皮膚傷害などが現れた症例が報告されている(CalforniaDepartment of Pesticide Regulation 1999)。
ラウンドアップ使用後に、発熱や皮疹・全身倦怠感・食欲不振が現れて入院し、その後手足に紫斑を伴う浸潤性紅斑が現れ、一部潰瘍化した例が報告されている。
この症例は過敏性血管炎と診断された(朝日他, 2000)。
Penagos et al. (2004)はパナマのバナナプランテーション労働者で農薬に対する刺激性やアレルギー性の接触皮膚炎を調べた。
労働者37 人でパッチテストの結果、カルバリル(=NAC、5 人)やベノミル(4 人)などでアレルギー性接触皮膚炎が認められ、皮膚炎を起こさないとされていたグリホサートでも2 人で陽性反応が認められた。
日本では、佐久総合病院皮膚科のHoriuchi et al. (2008)の報告によるとこれまでの皮膚傷害を起こしやすい農薬や有機リン剤使用が減少し、1975 年から2000 年に次第に減少してきたが、この時期にグリホサートなどの刺激性農薬による化学熱傷が増加してきたという。