論文:イミダクロプリド6 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・6.亜急性・慢性毒性
90 日間亜急性毒性試験(Wistar ラット)を用いた混餌投与実験では600 ppm 以上の投与の雄群で体重抑制、2400 ppm 投与群雄で体重増加抑制やトロンボプラスチン時間*延長、アルカリフォスファターゼ*やアラニンアミノトランスフェラーゼ*増加、総たんぱく質や総コレステロール、トリグリセリド、アルブミンの低下、肝臓の円形細胞浸潤や単細胞壊死、細胞質変化、核の肥大が見られた。

雌では体重増加抑制、トロンボプラスチン時間延長やアルカリホスファターゼの増加、総たんぱく質や総コレステロール、アルブミン減少が見られた。
*トロンボプラスチン時間:トロンボプラスチンは血液凝固に関与する因子で、この延長は血友病などの血液凝固がしにくい異常を示す。
*アルカリフォスファターゼ:この酵素はアルカリ性環境下で燐酸エステルを加水分解する酵素。
異常高知の場合は肝臓障害や骨疾患が疑われる。
*アラニンアミノトランスフェラーゼ:トランスアミナーゼなどともよばれ、アミノ酸とα-ケトグルタル酸との間のアミノ基の転位を触媒する。肝臓疾患などでこの値が高くなる。
Bhardwaji et al. (2010)は雌ラットを用いて0, 5, 10, 20mg/kg/日のイミダクロプリドを90日間経口投与した。
投与による死亡は観察されなかった。

20 mg/kg/日投与では体重増加減少が起こり、肝臓や腎臓、副腎の体重に対する相対重量が増加した。

この量では摂食は減少した。臨床化学的に血清と脳で、GOT やGPT、グルコース、BUN の上昇が見られ、アセチルコリンエステラーゼ活性が減少した。

自発運動活性が減少し、血液学的項目や尿では変化は見られなかった。脳や肝臓、腎臓では弱い病変があった。

5 mg/kg/日投与では生化学や形態学的な異常所見などは見れれなかった。

以上の結果からBhardwaji et al. (2010)は無影響量は5mg/kg/日で、最小影響量を10 mg/kg/日と考えた。

7.神経系への影響
胎児期の被ばく胎児期は化学物質被ばくに非常に敏感な時期であることが、有機リンを初めとする多くの化学物質について知られている。
Abou-Donia et al. (2008)はイミダクロプリド子宮内被ばく後の子孫に対する神経影響を調べた。

母親にイミダクロプリドを投与した子孫ラットは行動評価で感覚運動障害を示した。

この障害は中脳や皮質、脳幹および血漿のアセチルコリンエステラーゼ活性(125-145%増加)を伴っていた。

ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は有意な変化を示さないが、ムスカリン性アセチルコリン受容体の1 種は投与された子孫の大脳皮質で有意な増加を示した。

ニッスル染色では形態学的な変化を認めなかったが、グリア線維酸性タンパク質GFAP 免疫染色は運動皮質Ⅲ層やCA1、CA3、歯状回で増加した。以上の結果は致死量でないイミダクロプリドに妊娠中に被ばくすると、神経行動異常が生じ、グリア線維酸性タンパクの発現が人間の思春期初期に相当する生後30 日のラットで増加することを示す。
さらに神経系の発達中に甲状腺ホルモンが重要である事は良く知られている。

これに関しては次に述べる。

8.甲状腺への影響
イミダクロプリドは甲状腺に影響を与える。

特にラットの甲状腺は他の指標よりも敏感に影響を受けることが知られている。

甲状腺ホルモンは身体の代謝調節や発達途中の神経系に重要である事が知られている。
ラットの慢性毒性試験で300 mg/kg 以上のイミダクロプリドを投与した場合、甲状腺濾ろ胞中のコロイドに鉱物質の沈着物が見られている(食品安全委員会2007, EPA 2008)。
この鉱物質沈着物はイミダクロプリドが選択的に甲状腺コロイド中に存在し、コロイドを凝集させ、好塩基性にしたものと思われる。

凝集することで濾胞細胞が有機ヨウ素の取り込みを減らし、このことにより甲状腺ホルモン産生を低下させると思われる。

しかし、甲状腺ホルモン(T 3, T 4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)は測定されていない(EPA 2008)。
甲状腺には様々な物質が影響を与える。

良く知られているのはPCB であるが、その他にポリ臭化ビフェニルエーテル、エチレンビスジチオカーバメート(農薬)、ダイオキシン、過塩素酸なども良く知られている(例えばBrown 2003, Talsness et al. 2009)。

このように普遍的にといっても良いほど分布している甲状腺機能を妨害する物質群に、さらにイミダクロプリドを加える事は十分警戒すべきことである。