フェニトロチオンの毒性 | 化学物質過敏症 runのブログ

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runより:有機リン特集はこの論文で一旦終わりますが長いので2日に分けて掲載します。

PDFファイルからの転載はとても手間が掛かるのも理由です。

ご了承願います((。´・ω・)。´_ _))ペコ


・出展:環境汚染問題 私たちと子どもたちの未来のために
http://www.maroon.dti.ne.jp/bandaikw/


・フェニトロチオンの毒性
2010年9月28日
渡部和男
更新2010年9月28日
掲示2000年10月28日
要旨
フェニトロチオンは安全な農薬であるとされている。

しかし、有機リンは神経系に有害であり、特に発達中の小児に強い影響を与える。

そのため、米国では有機リンは毒餌用に登録されているが、それ以外の用途は認められていない。
急性毒性はパラチオンやメタミドホスのような猛毒農薬と比較すれば弱いといえるが、多くの事故報告があり、安全な化学物質とは言い難い。
フェニトロチオンはアセチルコリンエステラーゼを阻害することによって毒性を発揮するが、その他のエステラーゼなどに対する影響もある。

このため、アセチルコリンエステラーゼへの影響だけではその毒性の全体像は把握しがたい。
また急性毒性だけではなく、亜急性毒性や慢性毒性を評価する必要がある。
一般的な急性慢性毒性のみでなく、毒物学的には考慮すべき多くの毒性を発揮していると報告されている。
フェニトロチオンの変異原性に関するデータは、その分解/代謝産物の影響を含め、増加しつつある。

さらに、発癌性を示す論文も現れている。
さらに、神経系への影響、その結果として中枢神経系や末梢神経系、行動への影響が明らかになりつつあり、皮膚や肺・骨格筋・免疫系・消化器系・泌尿器系・血液への影響なども明らかになってきた。
さらに、エストロゲンへの影響のみならず、アンドロゲンへの影響が注目され、実験事実が積み重なってきた。
このような物質は、散布された近くの家や幼稚園・保育所などでは幼い子どもに大きな負荷を与えることになる。
謝辞
本報告を改訂するにあたって、原稿を読み、アドバイスなどを下さりました小沢祐子さんに謝辞を表します。


・1.はじめに
フェニトロチオンは有機リン殺虫剤であり、スミチオンという商品名で良く知られており、広く使われている。

毒性が弱いという俗信があり、周囲の状況に無頓着に無神経に使われていることがしばしばある。
近年、有機リンなどが発達中の子どもや胎児に大きな影響を与えることが知られるようになってきた。

米国科学アカデミーの米国研究評議会*は、1993 年の『幼児と子供の食事中の農薬』の中で次の様に述べている(National Research Council 1993)。
「食品中の残留農薬を抑制する現行の規制方法が幼児と子供を適切に守るかどうかという疑問に、この報告は取り組む。

残留農薬を摂取することによる害に対する幼児と子供の被ばくと感受性は、大人と異なるだろう。...全住民の平均的被ばくのみを考えている」。
報告書は、農薬の影響は大人と小児とが定量的、定性的に異なることを確認し、周産期や小児期の農薬毒性の研究を進めることを勧告し、小児に対する毒性研究が不十分な場合は10 倍までの不確実係数を考慮するように勧告している。

この意味は食品の残留を1/10 にすべきという意味である。
*全米研究評議会:National Research Council は米国科学アカデミーが作った組織。米国議会に科学や医学、工学などに関する勧告をしている。
以後、米国では農薬の再登録を通じてクロルピリホスなどの使用に対する制限が開始された。
1996 年に食品品質保護法が通過し、2000 年にはクロルピリホスの家庭や庭での使用やシロアリ駆除のための使用などをやめることを、EPA 長官は発表している(Environmetal Protection Agency2000)。

このような有機リンの規制はカナ(Standing Comittee on Environment and SustainableDevelopment 2000)やEU でも進んでいる。
以後米国では多くの有機リン剤が使用を制限され、フェニトロチオンも子どもがいじることができない容器に入れたアリとゴキブリ駆除用の毒餌のみが2000 年で登録されているだけになった(Environmetal Protection Agency 2000b)。
日本では有機リン農薬の規制はほとんど進んでいない。

しかし、2003 年に農林水産省から「15農安第1714号住宅地等における農薬使用について」(通知)が出され、公共施設や住宅地に近接する場所の病害虫の防除では、極力、農薬散布以外の方法をとるべきことや、やむを得ず農薬を使用する場合に事前の周囲への周知、飛散防止のため天候や時間帯に関する配慮などを定め、農薬使用者等に対する遵守指導について関係省庁に通知した。

その後、2007 年に改訂され、農林水産省と環境省との両省から再度通知された。

この結果、住民の意に反した農薬散布は減少したが、苦情を言わない地域や周囲の散布者を恐れて声を出せない地域ではいぜんとして農薬散布が度々されている傾向がある。
フェニトロチオン(商品名:スミチオン)は低毒性とか普通物と言われているが、決して安全な農薬でなく、多くの中毒事故や死亡事故を出している(菅谷他1981)。

パラチオンのような猛毒物質でなくとも、人間の神経伝達を妨害する有機リン剤は潜在的に危険な物質であるという認識を持ち、やむを得ない場合にのみ注意して使用することにしなければ安全は確保できない。
低毒性の有機リン剤(以下、有機リン)でも様々な症状が現れる。

1973 年の調査では、低毒性の有機リンを使った人は次のような症状を訴えた。

頭痛・頭が重い・めまい・吐き気・手足のしびれ・だるさ・食欲不振・目やに・眼のごろごろ感・目が見えない・眼が赤くなる・皮膚のかゆみ・皮膚の発赤とかぶれ・発汗・発熱・咳・鼻と喉の痛み・動悸・息苦しさ・酒の悪酔い(菅谷他1978)。
本稿はフェニトロチオンの毒性を理解し、正常な使用をするための資料となるように作成した。

病害虫や菌類、雑草に、安全で有効な作物や樹木などの管理を総合防除(IPM)によって対応すべきであり、無分別なあるいは信仰に似た農薬散布をすべきではない。