・ スイスの弁護士の話によると、スイスでは基地局を建てる時に、業者はきちんと周辺住民に公示して、基地局周辺の電磁波強度の予測計算結果を示した書類を、役所に提出しなければならない。住民はそれを閲覧することができ、内容に異議がある場合は、異議を役所に提出することができる。役所で審査して、業者の書類に間違いがある場合は訂正させるし、役所がOKでも住民が納得できなければ不服申立を行い、役所の別の委員会で審査をしてもらえる。その結果にも不服ならば、裁判を起こすことができる、という制度になっているそうだ。
基地局設置について、非常に厳しい規制があることが、非常に参考になった。
欧州評議会という、欧州議会よりもさらに多い国が参加し、日本もオブザーバーで参加している機関がある。
その欧州評議会議員会議も、「新しい(無線)アンテナの位置を、単に事業者の関心に従うだけでなく、地方や地域政府の担当者、地域住民、懸念する市民の団体と相談して決めること」をすべきという意見を出している。
基地局建設の時に地域住民に情報を伝えて、設置場所を地域住民と話し合って決めることの重要性が認識されているということだと思う。
リスクコミュニケーション
自分たちがリスクを負うかもしれないことについて、リスクを負うかもしれない人が正確な情報を手に入れて、その上でどうすべきかを話し合っていくことがリスクコミュニケーションであり、それが民主主義、国民主権の基本だと思う。
国なども、リスクコミュニケーションという言葉をよく使ったりするが、ごまかしの使い方をしていて、要は国民が不安に思うから、不安を解消するために「大丈夫だよ」という言い方をすることを、「リスクコミュニケーション」だと国は言う。
それは本当の意味でのリスクコミュニケーションではない。
本当の意味は先ほど述べたとおり、正確な情報をきちんと国民・住民が知って、その上で、自分たちで決定していくことがリスクコミュニケーションだ。
そもそも私たちは憲法上、知る権利がある。憲法21条の表現の自由から当然に認められる権利として、政治や地域のことなど自分たちの生活に必要な情報は、きちんと正確な情報を知る権利があるということだ。
憲法の人権の中でも知る権利は非常に重要な権利だと位置づけられている。
正確な情報を知ることが、これからどういう国・地域にするのか、自分たちがどういう生活をするのかを決定するための前提になるからだ。
憲法の三大原則と言われている国民主権や民主主義、すなわち自分たちで国の政治などを決定する権利を持っているのに、正確な情報がないと正しい決定は出来ない。
だから今の日本は、いろいろな面で正しい決定ができていないのではないかと思う。
言い方は悪いが、国民はバカではないと私は思っている。
正確な情報を国民が知ったら、必ずこの国は良い方向へ向かっていくと思っている。
電磁波問題について、先ほど説明した通り、規制が甘かったりきちんとした手続きの規制が採られていなかったりということは、やはりこの問題に対する正確な情報を国民が知らないことが一番の問題ではないかと思う。
その意味で、今日のシンポジウムは非常に意義があると思うし、これから私たちは、国民に電磁波に関する正しい情報を伝えていくためにそれぞれが、それぞれの立場で頑張っていくべきではないかと思う。
私は弁護士の立場で正しい情報を伝えていきたいと思うし、研究者、医師、母親、地域住民、こういうシンポジウムを行う団体に入った者として、それぞれの立場で、情報を伝えていければ良いのではないかと思う。これからも皆さんと一緒に頑張っていきたいと思う。