・総務省(ちょうせい)HPより
http://www.soumu.go.jp/kouchoi/substance/chosei/contents/67.html
・公害紛争処理制度の利用の促進に向けて
公害等調整委員会事務局次長 田家 修
裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の施行から2年が来ようとしているが、行政型ADRの一つであり公害紛争の内容に応じたきめ細かな利害の調整を図りつつ紛争を解決することのできる制度として、公害紛争処理制度の役割は一層重要となっている。
その現状と課題等について、簡単にまとめてみることとした。
(以下には、筆者の個人的見解も含まれていることをあらかじめお断りしておきたい。)
1 公害紛争の現状
我が国の公害紛争の件数の圧倒的多数を占めるのは市町村等に日々寄せられ、大半は担当者が申立者から苦情を聞き相手側に改善措置の指導、助言等を行うことで解決が図られている公害苦情処理であり、平成19年度の全国の受付件数は9万1,770件に達している(同年度公害苦情調査)。
これに対して、公害紛争事件として、いわゆる行政型ADRである都道府県の公害審査会等や国の公害等調整委員会が新規に受理した件数は、合計48件となっており、中には大型の事件が含まれてはいるものの調停や裁定という手続の利用件数は多いとは言えない。
他方、裁判所(民事訴訟及び民事調停)に持ち込まれた公害事件数は196件(民事調停法に基づく公害等調停及び第一審(地裁・簡裁)に係属した公害訴訟(損害賠償・差止め)の合計)となっている。
市町村等の苦情に対する解決機能が極めて高く、現状で全く問題がないのならそれでもよいということになろうが、苦情相談の窓口で受け付けた後6か月たっても解決していない苦情事件が約3,600件、1年たっても解決していない事件が約1,400件に上っている。
また、苦情相談の担当者からは、(1)最近は当事者間の主張の対立が激しく、市町村等が双方にいくら歩み寄りを要請しても対立がおさまらないケースが増えている、w例えば低周波騒音など被害の主張があっても、原因解明に専門技術的な知見が必要な場合には、市町村等では対応に窮するケースが相当数ある、
e苦情相談員の細部にわたる受け答えなどを巡って苦情申立者から非難を受けたり、トラブルとなって解決が遅れたりするケースも少なからずみられるといった声が聞かれる。
国民の生活に対する安心・安全への関心が高まり、その確保が行政にとって極めて重要な課題となっている今日、往時に比べ国民の権利意識が一段と強くなっていることも鑑みれば、公害紛争を巡る現状には、次のような問題があるのではないかと思われる。