飼い猫の消臭のベランダに散布したため階下に居住する者が化学物質過敏症に罹患2 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・【裁判所の判断の要旨】
1 クレゾールの散布行為について
クレゾールは、消毒殺菌薬として広く用いられてはいるが、高い組織浸透性と強い蛋白変性(破壊)作用があるため、これが経口、経気道又は経皮により体内に入ると、消化管、気道、皮膚などの局所損傷のほか、肝臓、腎臓、血液、中枢神経など全身に障害が起こり得る。

よって、猫の消臭目的によるクレゾールの散布に当たっては、人体にとって十分に安全な程度にまで適切な希釈を施すことはもちろん、散布の場所、方法、量等を含めて、必要かつ十分な注意を尽くす義務がある。
Yらは、X1から猫の悪臭に関する苦情を受けたため、バケツ一杯の水にクレゾールを1、2滴垂らすという、要するに目分量により希釈したに過ぎず、これで丹念にベランダの拭き掃除をしたというのであり、前記注意義務に違反したというべきである。

2 その他の薬品類の散布行為について
XらがB大学C研究室に委託して、y居室ベランダに密着した場所で捕集された屋外空気を分析した結果、人体に対して有害性が高いと考えられる「m(メタ)-ジクロロベンゼン」が一定濃度検出されたこと、トルエン、ジクロロベンゼンなどの化学物質が検出されたことが認められ、Yらによる人体に有害な薬品類の散布行為があったことを疑うことも不可能ではない。しかしながら、これは、あくまでも推測の域にとどまり、Yらによるその他薬品類の散布行為があったことを認めるには的確な裏付けを欠き、Yらの散布行為を認めるには困難である。

よって、Yらが、クレゾール水溶液を用いた以降、人体に有害な薬品類を散布したことを認めるには足りない。

3 因果関係及び損害について
Yらの不法行為との間で因果関係を有するX1の損害は、D病院に支払った治療費5万1,688円である。

また、Aマンションでは他の居住者の迷惑とならない範囲でペットの飼育が許可されているとはいえ、Yらがy居室内で多いときには約10匹の猫を放し飼いにしたというのは、他の居住者に対する適切な配慮を欠いた行為であること等を考慮すれば、X1の精神的苦痛に対してYらが責任を負うべき慰謝料は30万円が相当である。

他方、X2の損害を的確に認めることのできる証拠はなく、X2のYらに対する損害賠償請求は理由がない。