特定保健用食品 (トクホ) について6 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・III.利用上の注意

1.利用対象者を確認する

 トクホは、病気の人のためのものではなく、健康を増進したい人のためのものです。

あくまでも、健康が気になり始めた人や、普段の食生活に不安を感じている人など、「病気ではない人」を対象として設計されています。

専門職のアドバイスを受けた上で利用するならば、病気の人が利用しても差し支えない製品もあるかもしれませんが、誰を対象として設計された食品であるかを認識しておくことが、トクホの適切な利用法につながります。
  トクホは医薬品ではありません。トクホの効果に対して過度に期待をしたり、または医薬品的な効能を求めると、病気の悪化や科学的根拠のある治療を受ける機会を失う場合があります (2) 。

2.イメージだけで選ばない

 トクホは「法的根拠」や「科学的根拠」などが明確で、有効性や安全性についても厳しい審査を経たものなので、「いわゆる健康食品」と呼ばれる他の製品に比べて、優れたものと考えられます。

しかし、いくら優れた製品であっても、その利用方法が適切でなければ製品に表示されている効果を得られないばかりか、望ましい生活習慣の障害になることもあります。
 一般に、「トクホは国が認めている」という事実と、期待される効果のみがクローズアップされ、その効果的な利用法や利用上の注意などが認識されにくい状況になっています。

そのため、「トクホは国のお墨付きだから」と絶対の安心感を持ってしまう消費者が見受けられます。

しかし「特定保健用食品」という名前の通り、トクホも「食品」の一つであり、商品を選択するときのひとつの判断基準を示したものと考えるのが妥当です。

トクホさえ利用していれば絶対安心 (健康になれる) 、というものではありません。

3.誤った認識で利用しない

 例えば、トクホの中で「体脂肪がつきにくい油」が人気を集めていますが、食べれば食べるほど体脂肪がつきにくくなるわけではありません。

この油の有効性を確認した研究では、脂肪の総摂取量を一定量以下に制限した上で、通常の油と「体脂肪がつきにくい油」を置き換えて比較しています (13) 。

つまり、脂肪の総摂取量を制限しなければトクホの効果は得られないのです。

このように、トクホが持つ効果を最大限に引き出すためには、まず、正しい食生活の実践が必要です。
 上記は一例ですが、トクホに対して同じような誤解や過度の期待を持つ消費者が少なくないようです。

平成17年に行われた保健機能食品制度の見直しでは、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」という文言をトクホの容器包装の前面に表示することが義務付けられました。

これは消費者の誤った認識や、過度の期待、不適切な利用を是正するためと考えられます。

4.過剰摂取に注意する

  トクホには科学的根拠に基づいた期待できる効果があります。効果がある、ということは逆に、摂りすぎた場合には、望まない作用を起こす可能性があることも意味します。
 例えば、「お腹の調子を整える食品」を一度に大量に摂るとお腹がゆるくなる可能性があります。

しかし、このような注意点は製品の「利用上の注意」などに必ず記載してあります。

トクホはたくさん摂ったからといって大きな効果が得られるものではありません。利用する際は、必ず記載されている注意事項などを読み、摂取量や摂取方法に注意しましょう。

また、現在では錠剤やカプセルもトクホとして許可を受けていますが、これらは通常の形態の食品よりも、精製・濃縮した成分を簡単に摂取できるので、過剰摂取しないよう注意が必要です (2) 。
 また、2種類のトクホで、効果についての表示が異なるトクホでも、関与成分は同じであるトクホもあります。

例えば、「お腹の調子を整える食品」と「血糖値が気になり始めた方への食品」は、期待する効果は違いますが、どちらも同じ「難消化性デキストリン」を関与成分として含む商品があります。

関与成分が同じトクホを、異なる期待で同時に利用した場合、製品によっては、1種類の関与成分を過剰摂取する可能性があるので、注意が必要です (2) 。

IV.専門家のアドバイスを受ける

 「いわゆる健康食品」やトクホに関する問題の背景には、消費者の過度の期待や誤解もありますが、消費者がこれらの食品を適切かつ効果的に利用できる環境が整えられていないことも原因として挙げられます。健康食品を効果的に利用するためには、消費者が正しい認識を持ち、各々が状況に応じて必要な食品を選ぶことが大切です。
 今日では、様々な情報が玉石混淆の状態で溢れていますので、消費者自らが正しい情報を選択することは困難です。

そこで、健康食品が持つ成分やその機能、個人にとっての必要性、使用目的、使用方法等について理解し、正しく情報を提供できる管理栄養士やNR (Nutritional Representative:栄養情報担当者) 、薬剤師、医師などの専門職の役割が重要になってきています。

国も昨今の状況を受け、アドバイザリースタッフ (消費者に適切に情報を提供し、消費者が気軽に相談できる者) に関する通知を出し、専門職の養成を推奨しています (1) 。

自己判断のみで購入・利用せず、こうした専門家のアドバイスを参考にされることをおすすめします。

V.トクホの動向

  (財) 日本健康・栄養食品協会が2007年11月から12月にかけて行ったアンケート調査によると、2007年度のトクホの新規許可件数は過去最大の 128品目で、市場規模は6,798億円(メーカー希望小売価格ベース)と推定され、2005年度に比べ7.9%増加しました。

カテゴリー別では2005年度の調査に比べ、「中性脂肪が上昇しにくいまたは体脂肪がつきにくい食品」が182.4%、「血圧が高めの方に適する食品」が169.6%、「コレステロールが高めの方に適する食品」が102.8%の伸びを示していました (29) 。
 これは、近年メタボリックシンドローム (内臓脂肪症候群) が注目され、消費者が健康管理のためにトクホの効果に大きな期待を寄せていることの現れと考えられます。

2008年4月からはメタボリックシンドロームに着目した特定健康診査・特定保健指導が始まり、これまでよりもさらに多くの消費者が健康状態の改善や健康の維持・増進のためにトクホを利用することが考えられます (1) 。
 トクホは有効性や安全性について厳しい審査を受け、国に認められた食品ですが、トクホの利用だけでは十分な健康は手に入れられません。バランスのとれた食事や運動、休養など、基本的な生活習慣を整えた上で、上手にトクホを取り入れましょう。

トクホは、「これまでの生活習慣を改善するきっかけとして利用する」、という考え方が適切でしょう。