子どもの身体機能の未熟さ
乳児や子どもは大人と、大きさのみでなく、生化学的・生理学的機能の発達でも差があります。
急速な身体的精神的成長が子どもの特徴です。器官のあるものは十分発達していないのために化学物質による障害に弱い可能性があります。
子どもは、化学物質を吸収・代謝・排泄しますが、大人とは異なります。
胎児特有の敏感さ
胎児は環境毒物に特に敏感です。
化学物質は妊娠中に被曝した女性には影響を与えなくとも、胎児に影響することがあります。
このことは睡眠薬として使われたサリドマイドによる先天性障害の事例でも明らかです。
乳児や子どもの急速な成長
生後1~6ヶ月の間に乳児の体重は急速に増え、体重が倍になり、1才の誕生日には誕生時の体重の3倍になります。
中枢神経系(脳)や免疫系(胸腺)の成長は生後6ヶ月頃に最も急速に進みます。
6才の子どもの体重は成人の30%にすぎませんが、子どもの胸腺はほぼ大人と同じ大きさで、脳の大きさは大人の約80%になります。
化学物質の吸収や排泄が異なります
乳児と子どもの化学物質の吸収や代謝・排泄の経路は成人とは異なります。
化学物質の吸収率が高く、排泄が少ないために、子どもたちは成人より化学物質に敏感なことやその逆のこともあります。
子どもは取り込んだ鉛の約50%を吸収しますが、成人はわずか10~15%しか吸収しません。
腎臓は体からほとんどの化学物質を排泄する主な器官ですが、誕生時、乳児の腎臓の濾過率は成人のごく一部でしかなく、1才になって大人の濾過率になります。
子どもは環境汚染物質を保持しやすい
乳児と子どもはある種の環境汚染物質を多量に体内に保ち続けます。
多環式芳香族炭化水素によるDNA障害について、ポーランドの新生児とその母親について、研究者が調べました。
子宮内で多環式芳香族炭化水素に被曝した新生児では、胎児の被曝量は母親の1/10と推定されましたが、DNA障害は母親のレベルに匹敵していました。
同様に、幼い子ども(2才以下)の尿中の多環式芳香族炭化水素の被曝指標のレベルは母親より高いことが知られています。
アメリカのセントローレンス川の汚染源下流の居留地に住むモホーク族のPCBレベルを調べました。
川で捕まえた魚を食べた女性の母乳と尿中にPCBが検出されました。
母乳を飲んでいた乳児の尿中のPCB濃度は、母親の尿中の濃度より10倍も高いことが報告されています。
子どもは大人より長く生きます
子どもは大人より将来長く生きていきます。
そのため、人生の早い時期に化学物質によって引き金を引かれると、慢性病が発病するまでに十分な時間があります。
化学物質によって引き起こされる多くの病気は発病まで数十年が必要です。
発癌物質や毒物は、子ども時代初期の被曝は後の時期よりも影響を与えやすいと考えられています。このことは農薬などで証明されています。
子どもには不明なことが多い
子どもと乳児に対する被曝の影響についてはほとんど知られていません。
弱い決定的な時期はあるのだろうか?子ども特有の感受性とは何だろうか?あらゆる環境中の害に対する子どもと大人の差や、毒物の種類による差(たとえば、神経毒は発達中の神経系により大きな影響を与える可能性)はどのようなものでしょうか?
これらのことは今後研究する必要があります。