7.2 農薬を使用するに当たっての留意点
7.2.1 適切な農薬の選択
農薬を選択するに当たっては、以下の点について留意し選択する。
○必ず農薬登録がなされた農薬を利用すること(農薬のラベル等に「農林水産省登録第○○○○号」と記載のある農薬)。
なお、非農耕地専用と称して、農薬として使用することができない旨の表示がある除草剤は、農薬登録がなされていないため、公園や街路等の植栽には使用できない。
○人畜や環境への負荷をできるだけ低減する観点から、生物農薬やフェロモン剤に適用があるかどうかを確認し、適用がある場合は優先的に利用する。
ただし、このような農薬は速効性に劣る性質があることから、これら農薬を散布した場合の効果が遅いことに留意の上、利用する。
○対象とする病害虫以外の天敵等の生物に可能な限り影響を与えないような選択性の高い農薬を選ぶ。なお、天敵に対する農薬の影響目安の一覧表が、日本バイオロジカルコントロール協議会ホームページ(http://www.biocontrol.jp/index.html
)より閲覧できる。
○粒剤等可能な限り飛散の少ない剤型の農薬を利用する。なお、環境省が平成19年に行った調査結果*6では、乳剤に比べマイクロカプセル剤は散布直後から2日後までの気中濃度が低くなり、微粒剤のような固形剤を使用した場合は乳剤などに比べて気中濃度は極めて低くなり、覆土を行うことで気中濃度はより低下した。
○蒸気圧が高く、低温でも揮発しやすい農薬は、蒸気圧が低い農薬より散布後の気中濃度が高くなる(環境省が平成19年に行った調査結果*6より)ことから、揮発による影響を勘案する必要がある場合には留意する。
○当該防除対象の農作物等や病害虫に適用のある農薬を、ラベルに記載されている使用方法(総使用回数、使用量、使用濃度、使用時期等)及び使用上の注意事項を守って使用すること。
(農薬には剤ごとの使用回数の他に、有効成分ごとの総使用回数が設定されている。同じ有効成分でも商品名が異なる場合があるため、総使用回数を超過することがないよう、有効成分を確認することが必要である。)
○農薬を使用する段階でいくつかの農薬を混用する、いわゆる現地混用については、以下の点に注意する必要がある。
①農薬に他の農薬との混用に関する注意事項が表示されている場合は、それを厳守すること。
②試験研究機関がこれまでに行った試験等により得られている各種の知見を十分把握した上で、現地混用による危害等が発生しないよう注意すること。
その際、生産者団体等が発行している「農薬混用事例集」等を参考とし、これまでに知見のない農薬の組合せで現地混用を行うことは避けること。特に有機リン系農薬同士の混用は、混用による相加的な作用を示唆する知見もあることから、これを厳に控えること。
(なお、農薬の登録の有無や、適用情報の確認は、独立行政法人農林水産消費安全技術センターのホームページで可http://www.famic.go.jp/
)
特定の害虫のみをターゲットとする生物農薬やフェロモン剤については、飛散による危被害の発生はほとんど考えられない。
昆虫成長制御剤(IGR剤)は、昆虫の脱皮・変態を攪乱する農薬で、人畜毒性が一般に低い。
また、一般に選択性が高く、天敵に対する影響も少ないため、IPMでは重要視される農薬である。
なお、アンケート調査では、これら農薬を利用していない理由として「使ったことがない、よく知らない」と回答する部署が多く、発生病害虫に対して農薬を使用する場合は、使用する農薬の種類をよく検討する必要がある。
以下に主要な農薬について掲げる。
(農薬の登録情報は平成20年1月1日現在のものであり、使用の際は農薬のラベルを必ず確認すること)