化学物質過敏症が悪化すると野菜すら食べられないという人がいます。
農薬などの化学物質が原因では無い場合の多いのですが原因はコレではないかという記事です。
出展:国立医薬品食品衛生研究所
http://www.nihs.go.jp/index-j.html
療品部のホームページ
http://dmd.nihs.go.jp/index-j.html
植物の生体防御蛋白質
http://www.nihs.go.jp/index-j.html
病原菌の感染や傷害、植物ホルモンを含めた化学物質や重金属の適用、オゾンなどの大気汚染物質、紫外線や厳しい生育環境など、様々なストレスを受けた植物は、その身を守るために一連の生体防御反応を起こします (図1) 。
この過程で誘導される蛋白質群が、生体防御蛋白質(defense-related protein)です[1]。特に、農作物に病原菌が感染した際に誘導される抵抗性蛋白質については、農耕的な関心を元に古くから研究が進められ、感染特異的蛋白質(pathogenesis-related protein; PR蛋白質)と呼ばれてきました。
また、イソフラボン還元酵素など、植物が誘導する低分子性抗菌物質(ファイトアレキシン)の生合成に関わる酵素群も、生体防御蛋白質の一種です。
一方、種子や果実に蓄積される貯蔵蛋白質の多くは、栄養源の保存という役割に加え、外敵やストレス要因に対する構成的防御という働きを有すると考えられています。
こうした動的あるいは静的な生体防御メカニズムは植物の進化過程で良く保存されており、形態学的には近縁種に属さない植物であっても、類似した抵抗性蛋白質を誘導あるいは蓄積することが知られています。
例えば、現在までに多くの植物から見いだされたPR蛋白質は、由来する植物種に関係なく、アミノ酸配列の相同性や血清学的・免疫学的な相関性、酵素活性の特徴に基づいて、17のファミリーに分類されています(表)[2,3]。
注目すべきことにこのような生体防御蛋白質は、抗カビ活性や病害虫防除活性等を有することから、遺伝子組み換えによる抵抗性作物の創出など、植物育種への応用面で高い関心を集めている蛋白質群でもあります[4-8]。
しかし最近、果物や野菜、花粉、天然ゴムラテックス等に含まれる交差反応性アレルゲンが、実は植物の生体防御に関与するような蛋白質群であることが次々と明らかにされてきました[9-11]。
この事実は、植物に加わる様々なストレス、及び従来おこなわれてきたある種の品種改良や遺伝子組み換えによるストレス抵抗性植物の育種により、口腔アレルギー症候群(Oral Allergy Syndrone:OAS) 等のアレルギー疾患の誘発原因となる蛋白質が、農作物中に多く存在するようになってしまう可能性を示しています(図2)
[9-11]。遺伝子組み換えの手法を用いて新しく作成された農作物が食品として市場に出る際には、アレルギー誘発性を含めた安全性が厳重に評価・検討されることになっています[12]。
表. 推奨されている感染特異的蛋白質 (PR蛋白質) の分類法
ファミリー タイプメンバー 特徴
PR-1 タバコ PR-1a 抗カビ活性?, 14-17kD
PR-2 タバコ PR-2 クラス I, II, III型 ベータ-1,3-グルカナーゼ, 25-35kD
PR-3 タバコ P, Q クラス I, II, IV, V, VI, VII型 エンドキチナーゼ, 約30kD
PR-4 タバコ R 抗カビ活性, win類似蛋白質, エンドキチナーゼ活性,
プロヘベインのC-末端部領域に相同性, 13-19kD
PR-5 タバコ S 抗カビ活性, タウマチン類似蛋白質,
オスモチン, ゼアマチン, パーメアチン,
アルファアミラーゼ/トリプシン阻害蛋白質に相同性
PR-6 トマト インヒビター I プロテアーゼ阻害蛋白質, 6-13kD
PR-7 トマト P69 エンドプロテアーゼ
PR-8 キュウリ キチナーゼ クラス III型 キチナーゼ, キチナーゼ/リゾチーム
PR-9 リグニン合成ペルオキシダーゼ ペルオキシダーゼ, ペルオキシダーゼ類似蛋白質
PR-10 パセリ PR-1 リボヌクレアーゼ, Bet v 1 に関連した蛋白質
PR-11 タバコ クラス V型 キチナーゼ エンドキチナーゼ活性
PR-12 ラディッシュ Ps-AFP3 植物ディフェンシン
PR-13 アラビドプシス THI2.1 チオニン
PR-14 大麦 LTP4 非特異的脂質輸送蛋白質 (ns-LTPs)
PR-15 大麦 OxOa (germin) シュウ酸酸化酵素
PR-16 大麦 OxOLP シュウ酸酸化酵素類似蛋白質
PR-17 タバコ PRp27 -
その他、抗カビ活性や病害虫防除活性等を有する植物性蛋白質
2S 貯蔵アルブミン, パタチン, リボソーム不活性化蛋白質 (RIPs), ポリガラクツロナーゼ阻害蛋白質 (PGIPs), 非酵素的キチン結合性蛋白質 (ヘベイン, レクチン類, AMPs, AFPs, etc.), シスタチン, プロラミン貯蔵蛋白質, ビシリン (7S) 貯蔵蛋白質, ・・・・・