出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
ピコ通信/第162号
発行日 2012年2月23日
・平成22年度家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告
相変わらずつづく家庭内の化学製品による事故
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昨年末、厚労省は「平成22年度家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」を発表しました。
毎年年末に発表される報告は、皮膚科(皮膚障害 8病院)、小児科(誤飲事故 7病院)と(財)日本中毒情報センター(吸入事故)が協力して行われています。
報告の概要は
・皮膚障害は、装飾品(金属製)が38件と最も多く報告されました。
・小児の誤飲事故は、タバコが130件と32年連続で最も多く報告されました。
・吸入事故等は、殺虫剤が252件、洗浄剤が156件報告されました。
と、例年と同じ傾向が見られましたが、内容を少し詳しく紹介したいと思います。
■全体の概要
平成22年度に報告された事例の件数は、合計1,480件(前年度1,523件)でした。
全体数はあまり変わらず、吸引事故が増加、小児誤飲事故は減少(小児数が減少しているので、単純には比較できない)、皮膚障害は横ばいであることがわかります。
■皮膚障害
全事例数は108例(133件 原因物質複数例含む)種別で見ると、「装飾品」が38件(28.6%)で最も多く、次いで「洗剤」が13件(9.8%)、「時計」及び「ビューラー(まつ毛をカールさせる器具)」が7件(5.3%)、「下着」、「くつした」、「履き物」及び「接着剤」が各5件(3.8%)、「時計バンド」及び「ベルト」が各4件(3.0%)の順でした。
装飾品はここ数年増加傾向にあり、洗剤は減少しています。
原因製品については金属製のものが多く、44例について、金属に関するパッチテストが施行され、反応があった金属は多い順にニッケルが28例、コバルトが16例、パラジウムが8件でした。
事例1【原因製品:ピアス】
患者:23歳 女性 症状:21歳の時にネックレスで接触皮膚炎の既往あり。初診日の1年前に両耳にピアスの穴をあけた。初診日の1週間前から左耳に痒み・落屑・紅斑が出現した。
障害の種類:アレルギー性接触皮膚炎。
パッチテスト:コバルト(+)、ニッケル(+)。 治療・処置 シリコンピアスに変更、ステロイド薬外用、抗アレルギー薬・抗生剤内服。 転帰:軽快。
事例2【原因製品:洗剤(洗濯用)】
患者: 32歳 女性。 症状:初診日の2、3、7ヶ月前に洗濯用洗剤で手に痒みが出現し、徐々に増悪した。
障害の種類:刺激性接触皮膚炎。 パッチテスト:使用した洗剤(100倍希釈)(-)。
治療・処置:手袋をして洗剤との接触を回避し、保護剤を外用しているが軽快しない。
転帰:不変。
事例3【原因製品:ネイルアートの材料】
患者:37歳 女性。
症状:2年前からアクリル化合物を含有するネイルジェルを使用するようになる。
初診日の3ヶ月前からネイルアートをするたびに1週間程度両手が赤く腫れ上がるようになった。 障害の種類:刺激性接触皮膚炎。
パッチテスト:実施できず、原因不明。 治療・処置:ステロイド薬外用。
転帰:軽快。
事例4【原因製品:芳香消臭剤・アロマ入りろうそく】
患者:41歳 女性。
症状:初診日の2ヶ月前から多数のアロマ入り製品を使用するようになり、足を除く全身に痒み・紅斑が出現するようになった。
障害の種類:アレルギー性接触皮膚炎。 パッチテスト:ゲラニウムオイル(+)、ラベンダーオイル(+)。
治療・処置:ステロイド薬外用、抗アレルギー薬内服。
転帰:軽快。