飲酒とアセトアルデヒド5 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・5.アルコール性脂肪肝
 アルコール性脂肪肝(alcoholic fatty liver)は、常習飲酒により、肝臓の脂質代謝が障害され、主に、食事由来(外因性)の脂肪酸から合成されたトリグリセリドが、代謝されないで、肝細胞内に蓄積する。
 アルコール性肝障害としてのアルコール性脂肪肝は、以下のような要因が関与して、発症する。
 ・ミトコンドリア障害:アセトアルデヒドが障害する
 ・脂肪酸分解障害:アルコール代謝により、NADH2+が増加し、TCA回路が抑制され、アセチル-CoAが蓄積、β-酸化が障害される
 ・トリグリセリド合成の亢進:グリセロール 3-リン酸が増加する
 ・蛋白分泌障害:分泌蛋白と水分が、肝細胞内に、貯留し、風船化する

 アルコールは、肝細胞障害作用と、線維増生作用とにより、肝細胞を直接的に障害する。

 1).アルコールの肝細胞障害作用
 a.還元型のNADH2+が増加し、脂肪酸分解(β-酸化)が抑制される
 常習飲酒により、肝臓では、アルコールを代謝することにより還元型のNADH2+が、増加する。

 ADHにより、アルコールが、アセトアルデヒドに代謝されると、NAD+が、NADH2+に、還元される。
 CH3CH2OH + NAD+ → CH3CHO + NADH + H+

 ALDHにより、アセトアルデヒドが、酢酸(アセテート)に代謝されると、ADHの時と同様に、NAD+が、NADH2+に、還元される
 CH3CHO + NAD+ → CH3COOH + NADH + H+

 このように、肝臓内で、アルコールが代謝されると、還元型のNADH2+が、細胞質ゾルに増加し、NADH2+とNAD+の濃度比(NADH/NAD+比)が上昇する(redox shift)。
 NADH/NAD+比が上昇すると、TCA回路の代謝が抑制され(NADH2+が生成されなくなる)、アセチル-CoAが蓄積し(アセチル-CoAがTCA回路で代謝されなくなる)、脂肪酸分解(β-酸化)が、抑制される。

 NADH/NAD+比([NADH] / [NAD+]比)は、以下のような関係が存在する。
 K=[オキサロ酢酸][NADH]/[リンゴ酸][NAD+]
 なお、K=6.2×10-6。
 NADH/NAD+比は、ミトコンドリア内では0.1、細胞質ゾルでは、0.002に、維持される。

 ミトコンドリア内では、通常は、TCA回路から生成されるNADH2+を、呼吸鎖(電子伝達系)で利用し、ATPを生成している。
 肝臓では、ATP消費量(需要量)が多い時(アミノ酸代謝や脂肪酸合成など)には、リンゴ酸-アスパラギン酸シャトルにより、細胞質ゾルのNADH2+を、ミトコンドリア内に、輸送し、呼吸鎖でATPを生成する。
 肝臓は、空腹時などには、ミトコンドリア内、脂肪酸をβ-酸化(脂肪燃焼)させ、NADH2+やFADH2を生成し、呼吸鎖で利用し、また、ケトン体を生成する。

 アルコールの代謝により、脂肪酸分解(脂肪酸のβ-酸化)が障害される:アルコールの代謝により、NADH2+が、細胞質ゾルに増加すると、ミトコンドリア内で脂肪酸をβ-酸化しなくなり、脂肪酸の増加(蓄積)が起こる。
 また、トリグリセリド合成が促進される:ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)から、G-3-PDH(NADH2+をNAD+に酸化する)による、グリセロール 3-リン酸の合成が促進する。グリセロール 3-リン酸の合成の増加は、β-酸化(脂肪燃焼)の減少による脂肪酸の増加と合わさって、トリグリセリドの合成が、促進する。

トリグリセリドは、VLDLとして、血中に分泌されるが、過剰にトリグリセリドが合成されると、肝臓に蓄積し、脂肪肝を発症する。
 アルコール分解(アルコール代謝)において、アルコールが、アルコール脱水素酵素などにより代謝されるには、補酵素(NAD+)が必要(NADH2+に還元される)。

また、アルコール分解で生成された酢酸が、肝臓内で、アセチル-CoA合成酵素(Kmは、約1mMと高い)により、アセチル-CoAに変換され、脂肪酸合成に利用される(中性脂肪が合成される)には、補酵素(CoA)が必要。

他方で、補酵素(NAD+、CoA)は、脂肪酸分解(脂肪酸のβ-酸化と、アセチル-CoA生成)にも必要。

アルコール分解と、脂肪酸分解(β-酸化)は、補酵素(NAD+、CoA)の利用に関して、ミトコンドリア内で、競合する。

その為、大量に飲酒すると、アルコール代謝により、補酵素(NAD+、CoA)が使用されると、脂肪酸代謝に必要な補酵素が不足し、脂肪酸分解が抑制される。

また、アルコール分解により、酢酸が生成され、中性脂肪の合成が亢進し、肝細胞内に、中性脂肪が蓄積し、アルコール性脂肪肝になったり、血液中の中性脂肪が、増加する。

 b.アセトアルデヒドがミトコンドリアや微小管を障害する
 アルコール代謝で生じるアセトアルデヒドには、肝細胞のミトコンドリア機能障害作用や、微小管機能障害作用がある。
 ミトコンドリア機能が障害されると、脂肪酸分解(β-酸化)や、アセトアルデヒド酸化が、抑制され、肝細胞内に、脂肪酸や、アセトアルデヒドが、増加する。
 微小管機能が障害されると、分泌蛋白(アルブミンなど)の分泌が障害され、細胞内に分泌蛋白が貯留して、細胞内水分が増加し、肝細胞は、風船化(ballooning)する。
 アルコール性肝障害で、肝臓が腫大するのは、トリグリセリドが蓄積することだけでなく、分泌蛋白と水分が、肝細胞内に、貯留することが、原因と言われる。
 さらに、酸素消費量が亢進し、肝細胞は、比較的な低酸素環境に置かれ、肝細胞壊死や、線維化が起こる。