・2.アセトアルデヒドの毒性
アセトアルデヒド(Acetaldehyde:CH3CHO、AcH)は、蛋白、DNA、脂質とも結合し、化学反応を起こして、それらの一部を変性させる。
アセトアルデヒドは、血中濃度が数μM以上になると薬理作用が現れ、血中濃度が10μM以上に上昇すると、顔面紅潮(顔面発赤)、頭痛、悪心(嘔気)、嘔吐などの、中毒症状が現れる。
従って、アセトアルデヒドは、強い、有害作用があり、肝毒性を示し、肝細胞のミトコンドリアを障害する。
また、アセトアルデヒドは、肝類洞壁の星細胞(伊東細胞:コラーゲンを産生している、注2)を刺激し、肝線維化を促進する作用がある。
:注2:伊東細胞(Itoh cell)は、群馬大学の伊東俊夫教授により発見された。
伊東細胞は、一般には、肝星細胞(hepatic stellate cell)と呼ばれる。
伊東細胞は、脂肪貯蔵細胞(fat-storing cell)、リポサイトとも呼ばれる。
伊東細胞は、Disse腔(類洞外の、類洞内皮細胞と肝細胞との間の空間)に、存在する。
伊東細胞は、肝線維芽細胞系の細胞であり、筋線維芽細胞へ分化し、膠原線維(コラーゲン)を産生する。
伊東細胞は、肝線維化、更に、肝硬変を来たす。
伊東細胞は、ビタミンA貯蔵細胞でもあり、ビタミンAを、レチノールエステルとして、貯蔵する(ビタミンAを含んだ脂肪滴を含んでいる)。
伊東細胞は、類洞の血流調節にも、関与している。
肝臓では、門脈と動脈を流れて来た血液が、網目状の類洞(sinusoid:体循環の毛細血管に相当する)で混合され、肝静脈に流れ出る。
肝臓は、門脈の終末(終末門脈枝)と、肝動脈の終末が、類洞(sinusoid)を形成し、中心静脈(終末肝静脈)に流入する。
体循環の毛細血管系のように、類洞は、肝臓の微小循環系として、肝細胞との種々の物質交換(栄養素、アンモニアなど)に、関与している。
毛細血管の内径は、ほほ一様で、約10μmなのに対して、類洞の内径は、不規則で、5~30μm(時に、40~50μm)。
肝臓の類洞壁を構成する肝類洞壁細胞には、クッパー細胞、類洞内皮細胞、肝星細胞、Pit細胞の4種類が存在する。
類洞内皮細胞(sinusoidal endothelial cell)は、類洞に沿って扁平な形状で存在する細胞で、類洞壁を形成する。
類洞内皮細胞は、一般の毛細血管内皮細胞と異なり、基底膜を有していない。
類洞内皮細胞と肝細胞の間には、Disse腔(Disse space)が存在する。Disse腔では、類洞を流れて来た血液と、肝細胞との間で、種々の物質交換が行われる。肝硬変になると、類洞内皮細胞下に基底膜が出現し、類洞内皮細胞小孔が減少する。
クッパー細胞(Kupffer's cell)は、類洞腔内に、類洞内皮細胞に接着して、存在する。クッパー細胞は、骨髄由来で肝臓に遊走したマクロファージで、貪食能や抗原提示細胞機能を有する。
Pit細胞は、NK細胞と考えられ、類洞腔内に、存在する。