・シンポジウム10
今注目すべきアレルゲンと病態
司会者:眞弓光文1), 星野 誠2)(1)福井大学医学部小児科, 2)聖マリアンナ医科大学呼吸器・感染症内科)
3.ラテックスアレルギーとその交叉反応性
赤澤 晃
国立成育医療センター 総合診療部 小児期診療科
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天然ゴムは,世界的には紀元前から使われてきた.
その原料となるいわゆるゴムの木にはいくつかの種類があるが現在商業的に利用されているものはほとんどすべてがHevea brasiliensisという種類であり,マレーシア,タイ,インド等の東南アジア地域で栽培されている.
医療用の手袋として利用され始めたのは,1830年ごろからである.
その後天然ゴムの加工法の開発,医療従事者の感染予防の必要性から使用量が増加している.
天然ゴムに対する即時型アレルギー反応として明確に報告されたのは1979年のA.F. Nutterの報告でありアトピー性皮膚炎のある主婦が天然ゴム製の手袋を使用して接触蕁麻疹を起こした症例である.
その後米国CDCが感染予防のためにラテックス製手袋の使用指針を出してからは,その使用量が急増し,それとともに,ラテックスアレルギーによるアナフィラキシーショックの症例が1000件以上,アナフィラキシーショックによる死亡例が15件がFDAに報告された.
Hevea brasiliensisのラテックス中には多くのアレルゲン蛋白質が見つかり現在Hev b 1~Hev b 13まで報告されている.
医療従事者の血清IgE抗体が反応するのはHev b5,Hev b6.01,Hev b6.02が高頻度に検出されている.
Hev b3,Hev b7は二分脊椎症患者,小児での感作の頻度が高い.
また,これらの抗原のうちいくつかは,他の食物の蛋白質とアミノ酸配列の相同生が高いため交差反応性を示す.
患者は,それまで食物アレルギーがなく経過しているが,ラテックスに感作された後から,その特異IgE抗体が相同性のある食物の蛋白質と反応してしまうため,バナナ,アボガドなどを食べると蕁麻疹,アナフィラキシーショック,OAS(Oral allergy syndrome)をおこすことがわかってきた.
これをラテックス・フルーツ症候群(latex fruit syndrome)とよんでいる.
最近は,ハイリスクグループへの注意喚起,アレルゲン低減化手袋の開発,医療用具への表示義務が行われてきたので発症頻度は減少していると見られている.
第18回日本アレルギー学会春季臨床大会 2006年5月開催