・さらに、ヒトの血液、尿、牛の血液などに存在するインドール系物質を調べた。
現在までに報告されている天然由来リガンドのうち最も強いA h R リガンド活性を示すのがインドール系化合物であり、p M 、n M オーダーでA h R を活性化する。
ダイオキシン類と比べて同等以上に極低濃度で作用する。インドール系化合物は必須アミノ酸であるトリプトファンの代謝で生じる。
アブラナ科の植物( ブロッコリー、小松菜等) に存在が認められる。
インドール系化合物は提酸化作川がありガン抑制に働くと考えられる。
インディルビン、ICZ、FICZをヒト酸化酵素CYPsで代謝したところ、A h R 依存的に発現誘導されるCYPIA1、1A2及び1B1によって主に代謝されることが明らかとなった。
つまり、インドール系化合物は自らの誘導する代謝酵素によって代謝を受け、すみやかにリガンド活性を失う( 化学構造が変化) ことがわかった。
更に、D N A を構成する4 種類の塩基に付加体が結合していることを確認する町) - ポストラベル法及びLC/MS/MS法(液体クロマトニ重連結分子質量洲定) で、インドール系化合物のD N A 損傷性( インドール系分子の変化したものが塩基末端に結合して付加俸を形成) を調べたが、D N A 損傷は起こっていなかった。
5 . A h R リガンドの毒性を理解する3 分類
これらの総合的な研究から、A h R 活性を持つ多環芳香族類は
( 1 ) インディルビン型リガンド、
( 2 ) ベンゾピレン型リガンド、
( 3 ) ダイオキシン型リガンドの3 種類に分類できる。
( 1 ) インディルビン型リガンド: 天然由来のうち最も強力なA h R リガンドであるインドール系化合物は自らが誘導する代謝酵素であるCYPIA1、1A2及び1B1によって容易に代謝され、リガンド活性を失った。
インドール系化合物はP A H s のように細胞内で代謝を受けた後、D N A 損傷を引き起こすことはなかった。
( 2 ) ペンソピレン型リガンド: 自らが誘導する代謝酵素であるCYPIA1、1A2及び1 B 1 によって容易に代謝され、リガンド活性を失うが、さらに酸化還元代謝を受け、代謝した多環芳香族分子が付加体形成にもなるし、酸化還元過程で活性酸素種を生成しそれが酸化的付加体として遺伝子損傷となる。
(3)ダイオキシン型リガンド:細胞内で強いAhRリガンドとして働き続け、細胞外に排除されにくいことから、細胞内の他の代謝反応に様々な波及的影響を及ぼす。
波及的影響の全貌はまだ分かっていない。