・ 5.アイシング
2時間置きに15分間アイシングをすると、筋肉痛や打撲後の痛みが、早く軽減する。
打撲や捻挫の際には、組織の直接的な損傷に加え、血管の損傷により、細胞に酸素が供給されないため、組織の損傷が増悪する。
アイシングで、局所を冷却すると、細胞の代謝が抑制され、酸素需要量が軽減し、組織の損傷が、予防される。
氷でアイシングする際は、皮膚温を零下にして凍傷を招かないために、氷をタオルなどに包むと良い。
氷でアイシング出来ない時は、損傷直後に、一度、流水で冷却すると良い。
6.痛覚の変化
C線維を伝導された痛覚刺激は、脊髄後角の灰白質の第II層のニューロンを興奮させ、大脳に痛覚を伝導する Aβ線維を伝導された触覚刺激は、脊髄後角の灰白質の第III層で終わっている。
末梢神経を部分切断すると、Aβ線維は、第II層に侵入し、触覚刺激が、痛覚刺激として、大脳に伝導されるため、触っただけで痛く感じるようになる。
慢性痛では、痛覚神経と交感神経とに、可塑的な連結が生じ、精神的に興奮すると、奇妙な痛みが生じる(交感神経依存性疼痛)。
慢性痛では、神経の可塑性変化が起きて、オピオイド鎮痛剤は無効な場合が多く、抗うつ剤が、有効。
なお、Aβ線維は、脊髄後角で、痛覚(痛み)を伝達する、Aδ線維、C線維を抑制している(ゲートコントロールセオリー)。
帯状疱疹に罹患すると、ウイルスにより、Aβ線維、Aδ線維、C線維などが破壊される。
その後、破壊されたAβ線維は、細い神経線維として再生される為、Aβ線維は、Aδ線維、C線維の痛覚を抑制出来ず、帯状疱疹後神経痛として、エアコンの風や、衣服などの触覚刺激でも、痛覚(痛み)を感じてしまう(異痛症:allodynia)。
7.痛覚受容器
a).一次疼痛(速い痛み)
損傷時に、最初に感じる、鋭い痛み。痛みを感じた部位や時間を識別出来る。
大脳皮質に伝導される。
一次疼痛は、特異的侵害受容器である、高閾値機械受容器(主に機械的侵害受容器)が、感知する。
二次疼痛は、有髄線維のAδ線維が、伝導する:皮膚を圧迫し、有髄線維を圧迫すると、一次疼痛は、消失する。
b).二次疼痛(じんわりくる遅い痛み)
損傷時に、少し遅れて感じる、鈍痛。痛みを感じた部位を識別しにくい。
大脳皮質だけでなく、視床下部や辺縁系にも伝導される。
二次疼痛は、非特異的侵害受容器である、ポリモーダル受容器と、特異的侵害受容器である、高閾値機械受容器(熱侵害受容器、冷侵害受容器も含む)が感知する。
二次疼痛は、無髄線維のC線維が、脊髄後角の第II層に、伝導する:低濃度の局所麻酔で、無髄線維を遮断すると、二次疼痛は消失する。
C線維が伝導する二次疼痛は、歯髄炎や骨折なの際に、「ガンガン痛む」と表現される痛み。