電気ストーブ化学物質過敏症事件2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・理由
1. 本件の経過およびX1の発症の経緯、本件ストーブの形状、本件ストーブの稼働による化学物質の発生等についての認定事実、化学物質過敏症についてAの医師によるその診断基準や診断内容を検討すれば、次のことが認められる。

 X1は、それまで健康状態に特段の問題はなかったが、本件ストーブの使用を始めてから鼻に異変を感じ、後に腹部、胃部の異常、目の充血、手足のしびれ、運動障害、呼吸困難等が生じたこと、化学物質の影響を前提とせずに複数の医院、病院において診察を受けても確定診断ができなかったこと、本件同型のストーブは、ヒーターとガード部分との間隔が狭く、ガード部分は、稼働後2分で温度が280度程度にまで上昇する部分があること、ガード部分には有機塗料が塗布されており、高温に過熱されることによって化学物質が発生するものであったこと、発生する化学物質には人体にとって有害なものが多く含まれていたこと、使用説明書には換気等が必要であるとの記載はなく、X1も、使用中換気をしなかったこと、その使用状況も、1カ月近くの間、換気もしないで連日のように勉強しながら本件ストーブを使用し、しかも本件ストーブを足のすぐ近くに置いており、上記化学物質に直接暴露されやすい状況であったこと、X1は本件ストーブの使用を中止した後において、化学物質に過敏な反応を示すようになったこと、本件ストーブ使用後の同人の症状は化学物質によって生じる症状と矛盾がないこと等が認められ、本件症状が化学物質に基づく中枢神経機能障害および自律神経機能障害と診断された。

以上より、化学物質過敏症に該当するかはともかく、X1は、化学物質に対する過敏症を獲得したものと認められる。

2. Yは、本件同型ストーブから異臭が発生するという問い合わせがあることを認識した平成12年末までに本件ストーブから化学物質が発生することを予見することができ、予見する義務があった。

さらに、このような予見をしたならば安全性確保の見地から本件同型ストーブから発生する化学物質の有害性を検査確認する義務があった。

そして、遅くとも平成12年中には、シックハウス症候群の報道などを通じ、家庭生活において、建材、塗装、接着剤等の使用により化学物質が発生し、健康被害が発生することが一般的に知られており、Yも平成13年1月10日までには本件同型ストーブから発生する化学物質により人に対する健康被害が生じ、人によっては化学物質に対する過敏症を生ずることもあることについて認識することが可能であり、認識すべきであった。

3. 本判決は、以上のように判断し、X1の請求については原判決を破棄し、これを認め、X2およびX3の請求については、同人らの精神的苦痛は慰謝料をもって慰謝すべき精神的損害と認めることは困難であるとして棄却した。

これを受け、Yより上告および上告受理の申し立てがなされたが、最高裁は、X2およびX3に対しては全面的勝訴を得ているとして、これらの申し立てを却下し、X1に対してはその上告を棄却し、上告は受理しないことで確定している。