・内分泌かく乱化学物質と健康影響に関する疫学研究の現状 -
[発がん影響]
2-1 乳がん
〔要旨〕
内分泌かく乱化学物質(ダイオキシンを除く)と乳がんに関する疫学研究の現状について文献的考察を行った。米国立医学図書館の医学文献データベースPubMed を利用して選択した文献は2000 年12 月31 日までに48 件で、コホート研究6 件、症例対照研究34 件うちコホート内症例対照研究10 件、断面研究4 件、エコロジカル研究3 件であった。
2001 年1 月1 日以降はコホート研究2 件、症例対照研究18 件うちコホート内症例対照研究4 件、症例のみ研究1 件、断面研究2 件、エコロジカル研究3 件の報告があった。日本人を対象とした研究は1件もなかった。
文献的に検討した結果、有機塩素系化合物に関しては明確なリスク上昇についての一貫した証拠は見出せなかった。
Diethylstilbestrol については乳がんリスクを上昇させるという結果が複数の前向き研究で報告されており、経口暴露の場合にはリスクの上昇が起こると考えられた。
Diethylstilbestrol と有機塩素系化合物以外の内分泌かく乱化学物質と乳がんの関連に関する研究はきわめて乏しく、研究の必要がある。
〔研究結果〕
1.有機塩素系化合物
PCB と有機塩素系農薬類について、乳がんとの関連を検討した疫学研究はこれまでに数多く報告されている。
1)コホート研究
Saracci らに(1991)よるヨーロッパ10 ヶ国のコホートを使用した大規模な後ろ向きコホート研究では、クロロフェノキシ除草剤の暴露によるSMR の上昇はみられていない。
ただし、この研究では罹患は調べられておらず、観察死亡数も少ない。Reynolds ら(2004)による米国カリフォルニアの女性教職員を対象にした前向きコホート研究では、居住地から推定した農薬暴露レベルと乳がんリスクの間には有意な関連は見られていない。