内分泌かく乱化学物質4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・Q.4
環境ホルモンとの違いは?
生物が生体内外の情報に応じて自らの体内で作り出す情報伝達物質を「ホルモン」と呼んでいます。

「環境」中にホルモン様の生物活性をもつ化学物質があるようなことが分かってきたことから、これらの造語として「環境ホルモン」という言葉が生まれました。

これは、環境中ホルモン疑似物質とでもいうべき化学物質であり、科学的には適切な表現とは言えません。

Q.5
環境への影響は?
内分泌かく乱作用について、野生生物での具体例はいくつか知られています。

例えば、1980 年に化学物質会社の事故により流出したジコホール(dicofol)注1)、 DDT注2)及びその代謝(たいしゃ)物等によるアポプカ湖(フロリダ)の汚染と、この湖のワニの数の減少、通常の2倍に達する高値を検出した雌ワニの血漿(けっしょう)エストラジオール(estradiol) 値との相関を巡る事例があります。
 しかし、ヒトでは、環境からの化学物質暴露による内分泌かく乱作用により有害な影響を受けたと確認された事例は今までのところありません。
注1)ジコホール: 1957年に登録された農薬。果実、野菜等に殺ダニ剤として用いられている。
注2)DDT: クロルフェノタンという殺虫剤。戦後、農薬や害虫駆除剤として使用されたが、その毒性や残留(ざんりゅう)性が長いことから、本邦では1971年に使用が禁止された。
Q.6
どのような物質が疑われているのか?
ホルモン様作用の強さを調べる試験法はいくつか知られています。

そして、いくつかの化学物質ではこうした実験レベルでホルモン様作用が検出されることが分かっています。

それらは、ホルモン様作用以外の毒性を同時に持っている物質や、ホルモン様作用以外にはほとんど作用の無い物質まで様々です。

ホルモン様作用の強さも様々ですが、体内で作られているホルモンと比べると検出される作用自体は弱いものが大半です。
 ホルモン様作用を有する物質の例としては、医薬品のDES注1)等の合成ホルモン剤、DDT注2)等の有機塩素系の殺虫剤、PCB注3)やダイオキシン類、合成洗剤や殺虫剤として使用されているアルキルフェノール類、ポリ塩化ビニルの可塑剤(かそざい)注4)等に使用されるフタル酸エステル類、漁網や船底に使用されていたトリブチルスズ、植物性エストロゲン注5)等が挙げられます。
 一方、これらにどの程度有害な内分泌かく乱作用があるかどうかを見極める試験法は現在開発中です。
注1)DES: ジエチルスチルベストロールというホルモン剤。1970年代に流産の防止のため医薬品として使用されましたが、服用した妊婦から生まれた子供の思春期に膣がんが多発した等の健康被害が認められたことから現在は使用されていない。
注2) DDT: クロルフェノタンという殺虫剤。戦後農薬や害虫駆除剤として使用されたが、その毒性や残留性が長いことから、本邦では1971年に使用が禁止された。
注3)PCB: ポリ塩化ビフェニルという化学物質。耐熱性が優れているため、耐熱絶縁剤や熱媒体として1950年代から使用されたがその毒性や残留性のため1972年に製造が禁止された。
注4)可塑剤: 柔軟性を増し形成加工を容易にする添加剤
注5)エストロゲン: 卵巣の卵胞で作られるホルモンの一種で、思春期発来、二次成長発達、生殖(せいしょく)機能(きのう)や骨代謝維持に不可欠な物質。
Q.8
ヒトに対する影響は?
現在までのところ、内分泌系への薬理作用を期待して医薬品として使用されたDES注1)のような例を除き、内分泌かく乱化学物質と疑われる物質によりヒトに有害な影響を受けたと確認された事例ありません。
 成人の内分泌系は、恒常性(こうじょうせい)注2)維持機能が完成しており、化学物質による内分泌かく乱作用に対して、抵抗性があります。

しかし、内分泌系の未発達な胎児(たいじ)や未熟な幼児、小児ではこの抵抗性が弱い可能性があります。

これは、胎児においては、諸器官の形成に異常や遅滞を来すことにより不可逆的(ふかぎゃくてき)な影響が一生残ってしまう可能性にもつながります。

このような観点から特に子供に影響があるのではないかと危惧されていますが、明白な影響は現在のところ分かっていません。

化学物質の他に、食生活の変動や生活環境の変化等による影響もあり、疫学(えきがく)注3)調査による確認も取れていません。
 実験動物を用いた研究等により、胎児や未熟な幼児、小児で起こり得る影響の作用機序の解明を急いでおり、その結果を安全性評価の検討に役立てようとしているところです。
注1)DES: ジエチルスチルベストロールというホルモン剤。1970年代に流産の防止のため医薬品として使用されましたが、服用した妊婦から生まれた子供の思春期に膣がんが多発した等の健康被害が認められたことから現在は使用されていない。
注2)恒常性(=ホメオスタシス):(ホメオは同一の、スタシスは状態の意。アメリカの生理学者キャノンW. B. Cannon の命名。) 生物体の体内諸器官が、外部環境(気温・湿度等)の変化や主体的条件の変化(姿勢・運動等)に応じて、統一的・合目的的に体内環境(体温・血流量・血液成分等)を、ある一定範囲に保っている状態及び機能をいう。哺乳類(ほにゅうるい)では、自律神経と内分泌腺が主体となって行われる。
注3)疫学:疾病、健康状態などについて、地域・職域などの多数集団を対象とし、その原因や発生条件を統計的に明らかにする学問。