食物アレルギーの疫学とその変遷 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・シンポジウム3
食物アレルギーの最近の動向
司会者:海老澤元宏1), 古江増隆2)(国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部1), 九州大学大学院医学研究院皮膚科学2))

S3-1.食物アレルギーの疫学とその変遷

今井孝成1) 海老澤元宏2)
国立病院機構相模原病院小児科1) 国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部2)


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 我が国における食物アレルギーの疫学は,平成8年度に立ち上げられた旧厚生省食物アレルギー対策検討委員会(委員長飯倉洋治)に始まる.

同委員会において平成9,10年度に行なわれた後方視的な即時型食物アレルギー調査は,現行の全国モニタリング調査の原型である.

この調査結果はこれまで誰も疑わなかった3大原因食物“鶏卵,乳製品,大豆”の常識を打ち破り,ショック症状の出現率の高さを示すなどエポックメイキングであった.

この後,平成15年から食品衛生法アレルギー物質を含む表示が始まり,平成18年にはアドレナリン自己注射薬が小児にも適応を取ることになる.

平成13,14年度および平成17年には厚生労働科学研究班(主任研究員海老澤元宏)により日本アレルギー学会専門医および日本小児アレルギー学会会員を対象に引き続き即時型食物アレルギーの疫学調査が行われた.

調査は協力者の先生方に調査票を事前に配布し,外来などで即時型食物アレルギー患者が来院する度に記録していく,モニタリング形式に変更された.

同調査では,上位3大原因食物の頻度は変わらなかったが,平成13,14年度の4位以下ソバ(4.6%),エビ(4.1%),ピーナツ(2.8%),イクラ(2.2%),大豆(2.0%),キウイ(1.9%),バナナ(1.0%)に比して,平成17年はイクラ(4.5%),ピーナツ(4.2%),エビ(3.2%),ソバ(3.2%),キウイ(1.8%),大豆(1.7%),カニ(1.4%)と変化していた.

特に増加したイクラ,ピーナツは今後注意して経過を追う必要がある.

そもそも世界各国で食物アレルギーの原因食物は多少異なっている.

疫学的頻度や表示法の観点から見ると,我が国ではイクラやソバが特徴的であるように,米国ではピーナツ,欧州連合ではゴマ,セロリが問題視されている.

こうした食生活や生活習慣の違いや変遷は,直接的もしくは間接的に食物アレルギーの原因食物の頻度に影響してくると考えられる.

これ以外にも同調査では誤食率の高さや食品衛生法における特定原材料(鶏卵,乳,小麦,ソバ,落花生)の妥当性なども示してきた.

平成19年にも厚生労働科学研究によりモニタリング調査は施行され,その後の我が国における即時型食物アレルギーの推移を追っていくことになっている.

第57回日本アレルギー学会秋季学術大会 2007年10月開催