・2.環境省、熊本県、水俣市の説明
(1) 環境省は、日本と世界における水銀の状況、水銀条約に関する政府間交渉のスケジュール、条約の目的、予想される水銀条約の骨子、日本の立場と取り組み、2010年5月に鳩山由紀夫首相(当時)が提案した水銀条約を水俣条約と命名するとした件、などについてパワーポイントを使用して説明を行なった。
(2) 環境省は、水銀条約により水銀輸出が禁止又は制限されることになれば、日本にとっての主要な課題は、非鉄金属精錬や水銀含有製品から回収される余剰水銀の保管の問題であると述べた。
(3) 日本の水銀条約への基本的対応
(ⅰ) 世界各国において水銀対策の強化を進めるべき。
(ⅱ) 途上国を含めて、できる限り多くの国が参加可能な国際的な枠組みの構築を目指す。
(ⅲ) 製品や生産プロセス中の水銀使用や貿易を制限し、可能な場合には廃絶していく。
(ⅳ) 最良の技術の導入により環境への排出の削減。
(ⅴ) 水俣病と同様の健康被害や環境破壊が世界のいずれの国でも繰り返されることがないよう、条約作りに積極的に貢献していく。
(4) 熊本県と水俣市は外交会議が2013年に熊本県で開催されることを歓迎したが、水銀条約という命名については多くを語らなかった。
3. 質疑応答
(1) "水俣条約"という命名には反対であるとの発言があったが、全体としては"水俣条約"という命名に関する議論は特になかった。
(2) 何人かの参加者から、水銀へドロの埋立地やその他の水俣湾周辺の汚染場所についての懸念が提起された。
(3) 水俣湾埋立地は、水俣湾から浚渫された高い水銀濃度(25ppm以上)の大量(151万m3)の汚泥で埋め立てられ、長い歳月(14年)と莫大な費用(約485億円)をかけて1990年に完成した。
(4) 約34年前の工事初期段階における工事実施主体の事業所長であった小松聡明氏は、設計施工は当時の政府によって示された暫定指針に基づいて実施され、護岸用に使用された鉄パイルには寿命(50年以下)があり、地震に対する埋立地の安全性の考慮が設計時になされていなかったという懸念を提起した。
(5) 小松氏は、その暫定指針は現在も有効なのかどうか、及び当局は鉄パイルの腐食及び想定される地震に対して埋立地は安全であると考えているのかどうか、について質問した。
(6) 暫定指針について環境省は有効であると明確に回答したが、埋立地の安全性については誰も明確に答えなかった。
(7) 他の何人かの参加者もまた、水銀のような有害物質も含む高いアルカリ性の大量のカーバイド残渣により汚染されている、八幡残渣プールと呼ばれる他の汚染場所の安全性について質問した。
しかし、この八幡残渣プールの安全性についても明確な回答はなかった。
患者団体代表が環境省寺田審議官に要望書を手交
(8) 水俣の被害者及び市民の5団体が署名した環境大臣宛の新たな要望書(注1)が紹介され、環境省の寺田審議官に手交された。
要望書は、水俣問題が2013年に外交会議が開催される時までに解決されていなければ、その条約は影響力を失うであろうと述べている。
(9) 要望書は、2011年1月に千葉で開催されたINC2において発表された水俣病被害者・支援者の声明(注2)と基本的には同じである次の5点を求めている。
もし要望書が挙げる点について真の解決なしに条約の署名儀式が水俣で行なわれるなら、その儀式は皮肉であり、滑稽ですらある。