重症薬疹の治療 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・シンポジウム6
薬物アレルギーの診断と治療の進歩
司会者:池澤善郎1), 眞弓光文2)(横浜市立大学大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科学1), 福井大学医学部病態制御医学講座小児科学2))

S6-4.重症薬疹の治療

橋爪秀夫
浜松医科大学皮膚科


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 薬物療法は現代医療における重要な治療手段であるが,医原性疾患の主要原因でもある.

疾患の治療に用いられている薬物が,重篤な皮疹を引き起こすばかりでなく,後遺症をもたらし,時には命まで奪うという信じられない話が,現実に存在する.

厚生労働省によると,重症薬疹であるStevens-Johnson症候群(SJS)および中毒性表皮壊死融解症(TEN)の発症は,およそ年間100例である(2001年発表).その10%から20%が死に至ることを考えると,人を癒すための薬剤によって,殺される人々が,実に年に10人をこえているのである.
 これらの重症薬疹は,臨床上に特徴的で,比較的診断は容易と考えられる.しかし,本疾患に関与する医療者にとって,重症薬疹患者をいかに救命し,かつ後遺症を残さずに治癒せしめるかは,現在においても重要な課題である.

重症薬疹の治療法においては,ガイドラインが存在しないために,いまだ医療者の経験則に基づいた“さじ加減”が重要なのである.

例えば,TENの治療については,早期であれば大量ステロイドの全身投与が有効であるということに関しては,コンセンサスは得られてはいるが,具体的にどの時期までを早期としてよいのかという点に関しては,医療者の主観に委ねられている.

進行したTENにおいては,大量ガンマグロブリン療法や,血漿交換療法が有効とされているが,両者のいずれが適切であるか,また,その有効性の理論的な根拠もまだはっきりしていない.
 最近,ひとつのクリニカルエンティティとして定着した薬剤過敏性症候群(DIHS)という重症薬疹においても,治療法に関する議論がある.

強い炎症反応を抑えるためには,中-大量のステロイド全身投与を行なうことが多いが,これが遅れて出現するヘルペスウィルス群の再活性化を助長させはしまいかという懸念がある.

ステロイドの急激な減量によって,皮疹の再燃と同時に,重篤な肝機能障害や血球減少などをおこす報告もあることから,その減量方法についても,ある程度の指標が必要と思われる.
 今回は,重症薬疹の治療に関するこれまでの議論を整理しながら,その問題点を明らかにすることを目的とする.

また,我々の薬疹治療の経験を交えて,重症薬疹の適切な治療方法について検討してみる.

第21回日本アレルギー学会春季臨床大会 2009年6月開催