・シンポジウム15
薬物アレルギーの診断と予防・治療
座長:榊原博樹1),堀尾 武2)(1)藤田保健衛生大学医学部呼吸器・アレルギー内科,2)関西医科大学皮膚科)
3.NSAID不耐症の病態と診断
佐々木文彦
藤田保健衛生大学 医学部 呼吸器内科・アレルギー科
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非ステロイド系解熱鎮痛剤(NSAID)不耐症は,いわゆるアスピリン喘息(AIA)およびその類縁疾患と,ピリンアレルギーに大別される.
前者は,NSAIDの主たる薬理作用であるシクロオキシゲナーゼ阻害(プロスタグランディン合性抑制作用)に関連する機序によって症状が発現するもので,ほぼすべての酸性解熱鎮痛剤や,種々の食品・薬品添加物によって喘息発作が誘発される.
一方,後者は一般的な薬剤アレルギーと同様に,I型アレルギー反応によって皮疹,喉頭浮腫などアナフィラキシー症状を発現するものである.
本講演では,主にアスピリン喘息の病態と診断方法に関する最近の話題について提供する.
1.AIAの病態
AIAは,成人気管支喘息の約10%にみられる病態で,慢性重症型の非アトピー型喘息患者においてみられることが多い.
臨床症状として,鼻茸・慢性鼻炎・慢性副鼻腔炎などの鼻・副鼻腔疾患を合併していることが多く,発作誘発時には,顔面紅潮,鼻汁・鼻閉,腹痛などの前駆症状を呈することが多い.
腹痛に関してはAIAに好酸球性胃腸炎が合併している症例が報告され,AIAの全身的異常の一つとして注目されている.
また,従来よりAIAのNSAID不耐性は後天的に獲得され終生持続するものと考えられてきたが,最近では,十分な喘息治療によって,喘息発作が誘発されなくなる症例も増えている.
2.AIAの診断法
AIAの診断には,従来よりNSAIDの負荷試験が必須であるとされているが,現在においても同様である.
本邦の標準的な負荷試験の方法は,スルピリンおよびトレクチンを用いた吸入負荷試験である.
最近ではより簡便な方法として,経鼻的な負荷試験や,対象患者の血球にin vitroでアスピリンを負荷する方法も試みられている.
3.AIA以外のNSAID不耐症
AIAに類似したNSAID不耐症として,慢性じんま疹/血管運動性浮腫型のアスピリン過敏症がある.
これは,種々のNSAIDにより皮疹や浮腫が誘発されるもので,AIAとほぼ同様の機序が想定されている.
一方,ピリンアレルギーは,ピリン系(ピラゾロン系)のNSAIDによってのみアナフィラキシー症状が発現するもので,複数の薬剤にて負荷試験を行うことで容易に鑑別できる.
第17回日本アレルギー学会春季臨床大会 2005年6月開催