・一般演題
化学物質過敏症
座長:青木秀夫(下仁田厚生病院内科)
312.メチレンジフェニルイソシアネート暴露による化学物質過敏症が疑われた3例に関する検討
中村陽一1) 三木真理1) 小倉英郎1) 真鍋亜希子1) 坂井 公2)
国立高知病院臨床研究部1) 東京労災病院産業中毒センター2)
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【症例】40歳台の男性3例,アレルギー歴なし
【職歴】各々,5,20,7年間隧道工事
【病歴】隧道工事作業に従事する18名中3名が,目のチカチカ感,咽頭痛,咳嗽,呼吸困難,胸痛等の粘膜刺激症状及び項頸部痛,四肢しびれ感,嘔気,下痢等の自律神経失調症様症状を訴え,当院を受診した.
【検査成績】現場の濃度測定と病歴より,地盤強化剤に含まれるメチレンジフェニルイソシアネート(MDI)が原因と考えられ,代謝物であるメチレンジアニリン(MDA)の初診時における血清中濃度は,各々0.045,0.329,0.671mcg/lであった.暴露数日から1ヶ月~3ヶ月の間の測定では血清中MDAは指数関数的に減衰した.
発症初期の胸部CTでは過敏性肺炎の所見は認められなかったが,軽~中等度の低酸素血症がみられた.
MDI-RASTは,1例目と2例目で陽性,気道過敏性は2例目と3例目で亢進していた.
3例共,電子瞳孔計による自律神経機能検査で瞳孔反応の不安定性を認めた.
【臨床経過】呼吸器粘膜刺激症状は比較的早期に消失したが,自律神経失調症様症状が持続するとともに不特定の化学物質に対する過敏症の傾向がみられた.
発症状況とその後の経過よりMDI暴露による急性症状の他に化学物質過敏症の発症が疑われ,経過観察中である.
第16回日本アレルギー学会春季臨床大会 2004年5月開催