化学物質による室内環境汚染の動向と健康問題 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・シンポジウム7
シックハウス症候群の現状と展望
座長:鳥居新平1),長谷川眞紀2)(1)愛知学泉大学,2)(独)国立病院機構相模原病院アレルギー・呼吸器科)

5s.追加発言:化学物質による室内環境汚染の動向と健康問題

瀧川智子,吉良尚平
岡山大学大学院医歯学総合研究科公衆衛生学分野


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はじめに
 シックハウスとは「病める住宅」であり,建築材料に含まれる化学物質や高気密性による結露とカビ・ダニなどの存在により,健康障害(シックハウス症状)を誘発する可能性のある住居である.

ここでは室内環境中化学物質を中心に近年の動向を報告する.
1.室内化学物質濃度の近年の動向
1)アルデヒド類
 室内空気対策研究会によれば,一般住宅のホルムアルデヒド平均濃度は平成12~15年度の間で89.7→61.4→52.8→49.1 μg/m3と低下している.
2)揮発性有機化合物(VOC)
 平成12~15年度の調査では,トルエンはそれぞれ154.5,86.7,64.1,64.1 μg/m3,キシレンは26.1,39.1,21.7,17.4 μg/m3,エチルベンゼンは43.4,21.7,13.0,17.4 μg/m3と,いずれも低下傾向にある.
3)その他の化学物質
 斎藤らは平成13,14年のフタル酸ジ-n-ブチルは872,205 ng/m3,フタル酸ジ-2-エチルヘキシルは495,202ng/m3と報告した.

防虫剤の p -ジクロロベンゼンは14.1~46.4 μg/m3という報告がある.
2.室内気中濃度と自覚症状
 平成11~12年に行った私達の調査研究では,TVOC濃度が1200 μg/m3以上になると皮膚,眼,耳,喉,胸,中枢神経系,自律神経系,筋骨格系など,有機溶剤作業者によく見られる症状の訴えの増加が認められた.
3.化学物質の法的規制
 平成9年に厚生省は室内気中のホルムアルデヒド濃度の指針値を示した.

以後14年に職域における屋内空気中のホルムアルデヒド濃度低減のためのガイドラインを示し,15年に文部科学省は学校環境衛生基準を,国土交通省は建築基準法を改正した.

同年に農林水産省は日本農林規格を,経済産業省は日本工業規格でホルムアルデヒド放散量基準値を制定した.

法的規制は,対象物質の使用自粛と室内気中濃度低下に有効に働いていると思われるが,対象外の物質のリスク評価と対策が急がれる.
まとめ
 平成10年以降の室内空気中化学物質濃度の推移を中心に報告した.

シックハウス症状を考える場合,その場(住居)から離れると症状が軽快する特徴から,化学物質のほか,ダニ・カビ等の生物学的や通風・湿度等の物理的要因の解明や,個別のアレルギーや過敏症など他疾患との鑑別診断方法の確立が今後の課題である.

第17回日本アレルギー学会春季臨床大会 2005年6月開催