揮発性有機化合物の反復塗布によるマウス皮膚炎モデルの解析 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・シンポジウム7
化学物質過敏症の実態と対策
司会者:中村陽一1), 坂部 貢2), 鳥居新平3)(1)横浜市立みなと赤十字病院アレルギーセンター, 2)北里大学薬学部公衆衛生学, 3)名古屋大学医療技術短期大学部)

4.揮発性有機化合物の反復塗布によるマウス皮膚炎モデルの解析

田中宏幸1), 稲垣直樹1), 永井博弌2)
岐阜薬科大学薬理学1) 岐阜薬科大学臨床薬理学2)


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 シックハウス症候群は,室内のアルデヒド類やその他の揮発性有機化合物(VOCs)に曝露されることにより,多臓器にわたって臨床症状が発現されると考えられている機序不明の病態である.

その症状も多彩であり,アレルギー様症状,自律神経症状,皮膚症状などが出現することが示されている.

病因に関しては,病原微生物,アレルゲンおよびVOCs等が考えられているが,このうち室内のVOCsが重要とされている.

特に,ホルムアルデヒド(FA)は,建材,塗料,衣料品,紙など広範に使用されており,日常的に接触・曝露される機会が多いと考えられるが,接触による皮膚症状の程度・閾値ならびに機序に関しては不明である.

そこで本研究では,シックハウス症候群の発症および病態形成機序を解明する目的で,FAを代表とするVOCsを用いてマウス皮膚に及ぼす影響を検討した.

すなわち,マウスの両耳介の表裏にVOCsを週1回,計5回反復塗布し,その影響を検討したところ,FA塗布群では,塗布濃度に依存した耳介腫脹の増大が観察された.

一方,トルエンならびにキシレンを用いて同様に検討したところ,これらのVOCsの塗布によっても腫脹は観察されたが,その程度はいずれもFAに比し非常に弱く,皮膚反応惹起においても非常に高濃度の曝露が必要であることが明らかとなった.

次いで,FAにおいて観察された皮膚反応の機序を明らかにする目的で,5回目のFA塗布24時間後の耳介および頚部リンパ節におけるmRNA発現を検討した.

その結果,耳介ではIL-4,神経成長因子であるBDNFおよびNT-3ならびにバニロイド受容体-1(TRPV1)の発現亢進が,頚部リンパ節ではIL-4の発現亢進がそれぞれ観察された.

そこで,TRPV1受容体拮抗薬のcapsazepineならびにNGF低親和性受容体p75遺伝子欠損(p75KO)マウスを用いて検討した.

その結果,capsazepineはFA(5%)による耳介腫脹に対し,高用量において抑制傾向を示した.

また,p75KOマウスを用いた検討では,野生型マウスに比し耳介腫脹の有意な低下が観察された.

以上の成績より,FAは他のVOCsに比し,皮膚反応の惹起において,より重要なVOCsであることが明らかとなった.

また,IL-4を介したTh2反応ならびにTRPV1および神経栄養因子などを介した神経原性炎症が本皮膚反応に関与していることが示唆された.

第19回日本アレルギー学会春季臨床大会 2007年6月開催