日常生活下での心拍変動・体動の検討 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・シンポジウム7
化学物質過敏症の実態と対策
司会者:中村陽一1), 坂部 貢2), 鳥居新平3)(1)横浜市立みなと赤十字病院アレルギーセンター, 2)北里大学薬学部公衆衛生学, 3)名古屋大学医療技術短期大学部)

3.化学物質過敏症患者における日常生活下での心拍変動・体動の検討

熊野宏昭1), 石澤哲朗1), 吉内一浩1), 赤林 朗1), 坂部 貢2), 宮田幹夫3), 石川 哲3)
東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学1) 北里大学薬学部公衆衛生学2) 北里研究所病院臨床環境医学センター3)


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 【目的】われわれは,化学物質過敏症(MCS)患者に対して,日常生活下での自覚症状の経時的なプロフィールを検討し,化学物質の負荷があると考えられる状況のみで多彩な症状が出現していることを示してきた.

しかし,この症状出現が化学物質に伴った臭いなどに対する古典的条件付けで説明できる可能性もあり,それを除外するために,症状出現時に限らず心拍変動や体動に異常が認められるかどうかを検討することを目的にした.

【方法】北里研究所病院臨床環境医学センターを受診したMCS患者15名と,健常者11名に対し,心拍変動の記録を24時間,体動の記録を1週間連続で行った.

心拍変動に関しては,日中活動時と夜間睡眠時に分け,RR間隔の時系列データを対象に粗視化スペクトル解析でHF,LF/HF,スペクトル指数βを算出.RR間隔の変動パターンを調べるため,Detrended Fluctuation Analysis(DFA)解析を行いフラクタル指数α(α1:心拍数11拍以下,α2:11拍以上)を算出した.

体動に関しては,Coleのアルゴリズムに基いて解析し,日中活動時と夜間睡眠時に分け,体動量,睡眠指標を算出した.また体動のパターンを調べるため,DFAによりαを算出した.

【結果】心拍変動の解析結果では,日中のα2でMCS群の方が有意に大きかった(t(22)=2.20,p=0.038)が,LF,HF,LH/HF,β,α1には差を認めなかった.

体動の解析結果では,睡眠中のαがMCS群で有意に大きく(t(22)=2.606,p=0.016),睡眠時間がMCS群で有意に長かったが,体動量,睡眠効率,睡眠潜時には差はなかった.

そこで,睡眠時間を共変量にした共分散分析を行ったところ,αの有意差はさらに大きくなった(F(1,21)=9.27,p=0.006).

【結論】心拍変動の解析からは,MCS患者では日中活動中の心拍のホメオスタシス維持機能が弱まっている可能性が示唆された.

体動の解析からは,MCS患者では睡眠中に不規則な動きが断続的に現れる特徴が示された.

総睡眠時間で補正した結果,両群間の有意差が大きくなったことから,αの群間差には,睡眠時間とは関連のない脳神経系の調節異常が背景にあると推定された.

以上より,MCSの病態は古典的条件付けのみでは説明できないことが支持された.

第19回日本アレルギー学会春季臨床大会 2007年6月開催