化学物質過敏症の実態と対策 化学物質過敏症の臨床像 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・シンポジウム7
化学物質過敏症の実態と対策
司会者:中村陽一1), 坂部 貢2), 鳥居新平3)(1)横浜市立みなと赤十字病院アレルギーセンター, 2)北里大学薬学部公衆衛生学, 3)名古屋大学医療技術短期大学部)

1.化学物質過敏症の実態と対策 化学物質過敏症の臨床像

長谷川眞紀1), 大友 守1), 秋山一男2)
国立病院機構相模原病院臨床環境医学センター1) 国立病院機構相模原病院臨床研究センター2)


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 当院臨床環境医学センターで化学物質過敏症を診療するにあたって以下の仮クライテリアを設けてその可能性例を抽出し,臨床像を分析したので報告する.

化学物質過敏症の仮クライテリア:

1.化学物質曝露の既往,

2.多臓器の症状,

3.症状を説明する他疾患の除外,

4.慢性の症状,以上の4条件をすべて満足する例を可能性例とした.

可能性例80名であり,女性54名(初診時年齢19歳~71歳,平均43歳),男性26名(10歳~70歳,平均40歳)であった.80名の中に負荷試験陽性例29名(ホルムアルデヒド19名,トルエン10名)が含まれる.

女性のQEESI(Quick Environmental Exposure and Sensitivity Inventory)の症状スコアーの合計点の平均は51.9点であり,個別症状では粘膜刺激症状(7.1点),頭部症状(5.7点),情緒関連症状(5.3点)が目立った.

男性のQEESI症状スコアーの平均は52.3点,認識関連症状(6.6点),粘膜刺激症状(6.5点),胃腸症状(5.2点)が目立ち,女性と男性では症状に相違がみられた.

我々は可能性例50名の段階でアレルギー疾患の既往,合併をもつ例が多いことを報告しているが,80名になってもその傾向は変わらず,80名中65名(81%)が何らかのアレルギー疾患を持ち,とくにアレルギー性鼻炎(花粉症を含む)の合併が49名(61%)にみられた.

アレルギー性鼻炎合併例のうち38名でRASTを施行しており,スギ陽性者が30名,ハウスダスト・ダニ陽性者が21名(重複例を含む)であり,RAST陰性は1名のみであった.

静脈血酸素分圧値については,測定した74名のうち35torr未満の例が37名,35torr以上の例が37名にみられた(複数回測定例については最高値を採用).

しかし静脈血酸素分圧値とQEESI症状スコアーの間には総点数についても,各症状との関係についても有意なものは見られず,末梢での酸素利用が悪いことは推測されるが,その機序,病態との関係はこれからの課題である.負荷試験等で複数回静脈血酸素分圧を測定する機会のあった患者については,その値の変動が激しく,不安定であることが分かっている.

以上,化学物質過敏症の可能性例についてその臨床像を提示した.特徴的な症状はなく,静脈血酸素分圧以外に一般的な検査値異常は見られない.

その病態はまだまだ不明の部分が多く,仮クライテリアの検証も含めて,課題が多く残されている.

第19回日本アレルギー学会春季臨床大会 2007年6月開催