化学物質過敏症の病因と病態 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・シンポジウム1
化学物質過敏症
司会者:石川 哲1),西岡 清2)(北里研究所病院臨床環境医学センター1),東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科環境皮膚免疫学2))

4.化学物質過敏症の病因と病態

藤巻 秀和
独立行政法人国立環境研究所環境健康研究領域


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 われわれを取り巻く環境中には現在約5万種以上の化学物質が流通しており,その中での生活を余儀なくされている.

環境化学物質の生体への影響については,公害問題や職業曝露での影響を含む臨床・疫学の報告から実験動物での検討まで多くの科学的知見が蓄積されてきた.

それらをもとに,環境基準や指針値などが決定され規制がなされている.

しかしながら,明らかにこれまでの研究では毒性が見られない低い濃度でも化学物質曝露による影響がみられることが報告され,特に低濃度での複合曝露による影響が懸念されている.

化学物質過敏症は,本来,特殊な化学物質に感作されることにより免疫学的な機構を通じて症状が誘発されると考えられてきた.

最近では,極低濃度化学物質の長期曝露による神経系,免疫系での炎症と化学物質過敏症との関連が指摘され,さらに重篤化により本態性多種化学物質過敏状態になる可能性が考えられている.

化学物質過敏症の病因についてはいくつかの推論はなされているが,不明な点が数多く残されている.

室外,室内を問わず大気中の化学物質がその誘導・発症に関与していると考えられており,嗅覚系から視床下部─下垂体,あるいは海馬など大脳辺縁系近辺への影響を介した経路,呼吸器への刺激が神経末端を刺激することによる炎症の誘導や呼吸器での免疫学的炎症誘導を介した経路などが病因として論じられている.

低濃度化学物質曝露と過敏状態の誘導との因果関係の解明のために,我々は2年前より実験動物を用いて,低濃度ホルムアルデヒドの長期曝露による従来のアレルギー学や中毒学でみられていないような過敏な反応を示す指標の誘導について検討している.

今回,これまでの研究で得られた成果について概説し,問題点及びこれからの検討事項について議論したいと考えている.

第52回日本アレルギー学会総会 2002年11月開催