・4.規制の現状
厚生労働省は化学物質の安全性規制に関する諸法を所管しており、医薬品、医療機器等及び食品添加物については、品目ごとに市販前に有効性、安全性等が事前に審査されており、その安全性が担保されている。
また、化粧品及び食品用の容器包装等についても、成分として使用が可能な物質又は使用が禁止・制限されている物質のリストや製品に係る規格・基準の策定等が行われており、その安全性を担保する仕組みがある。
それ以外の一般工業品や家庭用品に含まれている化学物質についても、急性又は慢性毒性の観点から化学物質の製造・輸入等が規制されているほか、科学的な知見の集積等により、特定の化学物質についての規格・基準等が作成されている。
さらに、市販されている製品についても、医薬品、化粧品等に係る副作用等情報や食品が原因と疑われる健康被害の事例、家庭用品を含む消費生活用製品による死亡、危害等重大製品事故が報告される仕組みがある。
他方で、職場において用いられる化学物質についても、労働者の安全の確保及び健康障害の防止の観点から労働安全衛生法に基づく規制が行われている。
しかしながら、現段階では、ナノマテリアルに特化した法律や化学物質のサイズに着目した規制は存在しない。
世界的に見ても、現時点でナノマテリアルに特化した規制は存在していないが、日本と同様に、医薬品や化粧品などに含まれるナノマテリアルの安全対策について、米国食品医薬品局(FDA)、欧州共同体委員会等においても検討が進められており、その検討の結果について報告書が取りまとめられている。
それらの報告書によると、ナノマテリアルに関する大部分のリスクは現行の法律により対応可能といった結論となっており、現時点では、ナノマテリアルに特化した法規制を行うといった動きには至っていない。
他方、ナノマテリアルについての情報が不足しているため、情報収集を推進する必要があるとされており、収集された情報に基づき、法規制やその運用を見直す必要性が指摘されている。
こうした指摘を受けて、米国、欧州等において、政府が事業者等に対してナノマテリアルの安全性等についての情報を提出するよう求める動きも始まっている。
また、食品添加物として使用されているナノマテリアルについて、国連食糧農業機関(FAO)/世界保健機関(WHO)合同食品添加物専門家会議(JECFA)において検討されている。
その報告書によると、これまでJECFA では、ナノ化されたものとそうでないものとの違いを踏まえた評価は行っていないが、ナノ化された食品添加物がこれまでの食品添加物とは異なる性質を有する場合には、これまでの食品添加物に対する評価結果をナノ化された食品添加物に対してそのまま適応することはできないと指摘されている。