・(2)ナノマテリアルの性状
物質の諸特性(電気的、光学的、磁気的等の性質)の多くは、その物質中の電子の挙動を反映したものであるとされている。
ナノマテリアルにおいては、結晶のサイズが小さくなることにより、物質中の電子の状態が変化し、通常の大きな物質にはないような現象が生ずるとされており、ナノマテリアルは、一般の化学物質とは異なる性質を有することが示唆されている。
化学的な性質としては、ナノサイズになると反応性が高まるとされている。
これは、化学反応は、基本的には物質の表面で起こるが、ナノサイズになるにしたがって単位質量当たりの表面積である比表面積が大きくなることから、比表面積の増大により反応性が高まるためである。
力学的な性質としては、ナノサイズになると強度が高まるとされている。
例えば、単層カーボンナノチューブの強度は鋼ワイヤーの約5~20 倍、弾性率は鋼ワイヤーの約20 倍であるとされている。
また、金属材料においては、結晶粒径が小さくなるほど、硬度が増すことが知られている。
電気的な性質としては、通常、物質に電圧をかけると電流が電圧に比例して連続的に変化するとされているが、ナノサイズになると電流の値は不連続の値を取るようになるとされている。
磁気的性質としては、通常使用している磁石は小さな磁区の集まりであるが、ナノサイズになると、ナノマテリアルそのものが1 つの磁区に相当するようになり、それが非常に高い保持力を持つとされている。
光学的性質としては、金属光沢として観察されるような物質でも、小さくなると着色するという現象が起きるものもあり、また、サイズによって色の出方も変わってくるとされている。