・3.開発の現状及び最新の科学的知見
(1)我が国におけるナノマテリアルの用途・生産量
厚生労働省が平成19 年度に実施した委託調査によると、ナノマテリアルの
用途・生産量は図表1 及び図表2 のとおりである。
この委託調査では、既に実用化されている、又は実用化が近いとされる21 種類のナノマテリアルを対象として、ナノマテリアル製造事業者等からのヒアリング調査が実施された。
調査対象となったナノマテリアルの粒子(分子)径のうち、炭素系のナノマテリアルが最も小さく、フラーレンでは1nm 以下であり、単層カーボンナノチューブでも1nm 程度であるとされている。また、ナノマテリアルの用途としては、タイヤ、家電・電気電子製品、化粧品、塗料・インクに多く使用されているとのことである。
ナノマテリアルの種類別にみると、シリカ、銀+無機微粒子1、酸化チタン、ナノクレイ及び酸化亜鉛が多くの分野で使用されており(図表1 参照)、使用量としては、カーボンブラック、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛等が多く使用されているとのことである(図表2 参照)。
当該委託調査結果の概要は以下のとおりである。
なお、使用量、使用例、利用のメリット等に関する情報は、当該委託調査の一環として実施されたナノマテリアル製造事業者等からのヒアリング調査から得られたものであり、平成19 年度厚生労働省委託業務ナノマテリアル安全対策調査報告書(株式会社東レリサーチセンター)から一部改訂して引用したものである。
① 主なナノマテリアルの使用状況
(ア)カーボンブラック
2006 年の国内使用量は約100 万トンであり、ゴム・樹脂との混練や溶媒に添加して使用されている。全体の80%がタイヤに、15%がその他ゴム製品に、5%がインキ塗料等の着色用に使用されている。
ゴムの補強、ゴム・樹脂の導電性・着色性の向上及び顔料としての着色性向上が利用のメリットとされている。
(イ)シリカ(結晶質及び非晶質)
2006 年の国内使用量は約13,500 トンであり、シリコーンゴム、FRP、塗料等に使用されている。
強度向上及び絶縁性・耐水性の向上が利用のメリットとされている。
1 銀イオンをシリカ、アルミナ等に付着させたもの。
(ウ)酸化チタン(ルチル型及びアナタース型)
結晶形の違いによりルチル型とアナタース型があり、アナタース型は約1000℃でルチル型に転移するとされている。
ナノ化された酸化チタンの2006 年の国内使用量は約1,250 トンであり、ルチル型の方が生産量が多い。
ルチル型は化粧品、塗料、トナー等に、アナタース型は光触媒コーティング剤等に使用されている。ルチル型については紫外線防御が、アナタース型については光触媒機能による防臭作用等が利用のメリットとされている。
(エ)酸化亜鉛
2006 年の国内使用量は約480 トンであり、化粧品等に使用されている。
紫外線防御及び透明性の向上が利用のメリットとされている。
(オ)単層カーボンナノチューブ
2006 年の国内使用量は約100 キログラムであり、樹脂やセラミックスに混練して使用されるが、用途としては研究開発中である。
軽量化及び導電性付与が利用のメリットとされている。
(カ)多層カーボンナノチューブ
2006 年の国内使用量は約60 トンであり、半導体トレイ等に使用されている。導電性付与、強度向上及び電磁シールドが利用のメリットとされている。
(キ)フラーレン
2006 年の国内使用量は約2 トンであり、スポーツ用品に使用されている。
反発性能の向上、軽量化及び強度向上が利用のメリットとされている。
(ク)デンドリマー2
2006 年の国内使用量は、紙用途として約50 トン、化粧品用途として数トンであり、紙用途での使用が多い。
紙用途の使用形態としては紙コーティング剤がある。
紙用途では流動特性コントロール、化粧品用途としては、撥水性及び撥油性が利用のメリットとされている。
2 デンドリマーとは、構造が正確に制御された樹枝状高分子又は超分岐高分子と呼ばれている高分子材料の一種である。
一般の高分子に比べて、構造制御が容易であり、構成要素の組み合わせにより、異なる形・サイズの化合物を作ることが可能とされている。
(ケ)銀+無機微粒子
2006 年の国内使用量は、約50 トンであり、樹脂・繊維への練り込み、塗料等に使用されている。
抗菌作用が利用のメリットとされている。
(コ)ナノクレイ3
2006 年の国内使用量は、約250 トンであり、農薬の沈降防止剤、塗料等に利用されている。沈降防止や粘度調整などが利用のメリットとされている。