・図2 DINPがBMDCの細胞表面分子の発現に及ぼす影響(拡大表示)
DINPは,BMDCのリンパ節への遊走に関わるケモカインレセプターであるCCR7 (a) とCXCR4 (b)の陽性細胞や抗原提示に関わるMHC class IIとCD86の二重陽性細胞(c) の割合を増加させることが分かりました。
*p < 0.05, **p < 0.01; DINP曝露群対非曝露群。
・図3 DINPがBMDCの抗原提示機能に及ぼす影響(拡大表示)
DINPに曝露したBMDCのダニ抗原特異的な抗原提示機能(a) とTh2サイトカインであるIL-4の産生誘導能(b) は,非曝露群に比べて増加することがわかりました。
*p < 0.05, **p < 0.01; DINP曝露群対非曝露群。
◆おわりに
フタル酸エステルは,抗原提示細胞の活性化を介してそれに続くT細胞をはじめとする免疫担当細胞の機能を促進することにより,アレルギー疾患を悪化させる可能性が示唆されました。
現在,様々な環境化学物質を対象として,免疫担当細胞に対する影響を中心に研究を進めていますが,物質によって反応性や作用点が異なることも分かりつつあります。
このin vitro における免疫担当細胞を用いた環境化学物質の影響評価は,影響メカニズムの解明のみならず,免疫・アレルギーに関する簡易・迅速な影響評価手法としても有用であると考えています。
今後は,免疫担当細胞と相互作用する上皮細胞,内皮細胞などに対する影響やそれらの複合的な影響も考慮し,環境化学物質による健康リスク低減のための施策に役立つ研究を進めていきたいと考えています。
(こいけ えいこ,環境健康研究領域
生体影響評価研究室主任研究員)