SHS診療マニュアル第2部9 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・(感染症)
Ⅰ ビル関連病の原因となる感染症
1.はじめに
病原体が建物の空調設備などを介して室内空気中に広く伝播し、居住者に集団感染を引き起こすビル関連病の事例が多数報告されている。

原因となる感染症のほとんどは急性疾患であり、症状が反復・遷延するシックハウス症候群との鑑別は通常は容易である。

また、シックハウス症候群の診断においては、問題となった建物や状況から離れると症状が消失または改善し、問題となった建物や状況に出会うと症状が再発することが重視されているが、これは感染症にはないシックハウス症候群の特徴として鑑別診断のポイントとなる。
2.レジオネラ症
①レジオネラ属菌の分布と感染経路
レジオネラ症はLegionela pneumophilaに代表されるレジオネラ属菌による感染症である。

レジオネラ属菌は土壌、河川、湖沼、温泉など広く自然界に分布しており、空調設備、給湯器、循環式浴槽などの人工環境水の中でも増殖する。

通常は、レジオネラ属菌で汚染された環境水が細かな水滴となり、肺内に吸い込まれて感染する。

一方、ヒトからヒトへの感染はないと考えられている。
②症状
レジオネラ肺炎とポンティアック熱の2種類の病型があり、潜伏期間は2~10日間である。
レジオネラ症の多くがレジオネラ肺炎であるが、発熱、悪寒、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛などの非特異的症状から始まり、次第に、咳嗽、喀痰、胸痛などの肺炎症状を呈するようになる。

急速に悪化して呼吸困難に陥ることもある。胸部X線上、肺胞浸潤影が急速に進行し、胸水貯留を伴うことが多い。

また、精神・神経症状の合併がしばしばみられ、傾眠、幻覚、小脳失調などがみられる。水様性下痢の合併も多い。
ポンティアック熱の主症状は発熱で、悪寒、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛などの非特異的症状を呈する。

胸部X線上、肺炎像を認めず、多くは数日で自然回復する。
いずれの病型も臨床症状からレジオネラ症の診断に結びつく例は少なく、確定診断のためには呼吸器由来の検体を採取し、特殊培地を用いてレジオネラ属菌を検出する必要がある。

また、肺炎の治療において、ペニシリン系やセフェム系抗菌薬が無効であり、この疾患を早期に疑って治療に臨むことが求められる。
③我が国での集団感染状況
厚生省レジオネラ症研究班が行った全国調査によると、1979年から1992年までの14年間に発生したレジオネラ症は86例で、日本全国に分布していた。

これらはいずれも散発例で、1976年、フィラデルフィアで全米在郷軍人大会が開催された時のような大規模な集団発生は起きていない。

しかし、1994年、都内の民間研修施設で罹患者45名を出すポンティアック熱の集団感染が発生した。

この事例では、この施設の空調用冷却塔水が感染源であった。

肺炎型のレジオネラ症の集団感染は、1996年、都内の病院で新生児3人がレジオネラ肺炎を発症し、そのうち1人が死亡した。

この事例では、新生児室の給湯設備の湯からレジオネラ属菌が検出された。その後、静岡県内のレジャー施設の温泉利用客23人が感染し、2人が死亡、茨城県内の総合福祉施設で入浴した45人が感染し、3人が死亡等の集団感染がある。