・ア 医療の提供等に関する課題
○ 体系的・計画的な医療の提供について
アレルギー診療の可能な医療機関の立地については地域により様々であるが、その実情や在り方について、地域において体系立てて計画的に把握されていないのが現状である。
アレルギー疾患に係る専門医としては、アレルギー専門医のほか、呼吸器内科専門医、耳鼻咽喉科専門医、皮膚科専門医、小児科専門医等が考えられるが、地域における医療を体系的・計画的に提供するためには、それらの医師がそれぞれの地域にどの程度いるか、専門医のいる医療機関がどの程度あるかを把握することも、重要であるが、現状では必ずしも十分に把握できていない。
○ 早期診断・早期治療について
患者の重症化を防ぐためには早期診断、早期治療が重要であるが、そのためには発症早期の患者や軽症の患者を診療する可能性が高い、地域の医療機関のかかりつけ医におけるアレルギー疾患管理能力の向上が重要である。
○ 多診療科との連携や医師の資質について
アレルギー疾患の標的となる臓器は多岐にわたり、乳幼児期から高齢期まで全年齢層が罹患する疾患群であるので、アレルギー診療には幅広い知識が必要となるが、現在は各診療科が縦割りでそれぞれの診療を行っている場合が多いため、診療科間における医療連携の構築がなされていないと指摘されている。
また、アレルギー専門医以外のかかりつけ医によるアレルギー診療においては必ずしも最新の診療ガイドラインに基づいた標準的な治療がなされていない場合もあるとの指摘がある。
○ アレルギー疾患に関連した死亡について
人口動態統計調査によるアレルギー疾患に関連した死亡は、他の死亡原因に比較して大幅に減少を認めており、疾患対策としては奏功している分野であると指摘されている。
しかし、前述のとおり、依然として喘息を原因として死亡する患者は平成21年の人口動態調査において、2,139名おり、適切な治療により死に至ることを防ぐことが可能な疾患である喘息及び喘息死に対する積極的な取組は、今後とも必要である。
近年の喘息死の原因としては、喘息診療に対する患者の認識不足や不定期受診等、患者側の要因が大きいとされている。
その一方、診療側については、診療ガイドラインに基づいた継続的かつ計画的な治療管理が喘息死を有意に減少させるとされているが、ガイドラインの普及は十分といえず、高齢者介護施設等の入所施設において吸入ステロイド薬が普及していないなどの指摘もある。