・<「補償」求める被害者が集結>
――神山先生にお聞きしますが、被害弁護団の今後の展開についてはどうでしょうか。被害者の方もお知りになりたいと思っているでしょう。
神山 今、全国に弁護団が立ち上がっておりますし、それぞれの弁護団でホームページをつくっていますので、それらから情報を得ることができます。
被害110番は、8月1日の東京に続いて神奈川、仙台、愛知、京都、大阪、福岡でも体制を整えました。
無料相談会も9月6日に愛知県で、9月10日に東京で、9月30日には福岡で開催しました。
無料相談会に来られた方で、弁護士を頼みたいという方には、今後の具体的な対応を考える個別相談会を行なっています。
保障額などは今後詰めていくことになりますが、最初はメーカー側と交渉することになります。
交渉がまとまらなければ集団訴訟という形になります。その場合、被告を誰にするのか。
悠香なのか、フェニックスなのか、それとも片山化学工業なのか、あるいは3社全部か、今の段階でははっきりしたことは言えませんが。
1968年に、PCBなどが混入した食用油を摂取した人に障害が発生したカネミ油症事件が起きましたが、原因成分であるPCBを製造した鐘淵化学工業(現カネカ)にも訴訟を起こしています。
また、被害を防げなかったとして国にも訴訟を起こしています。この事例のように、どこまでを訴訟の対象とするかについても、今後、弁護団として検討していきます。
一番大きな問題は、被害を受けた方が治るのかどうかという問題です。治らないとすれば後遺症が残りますので、賠償額が変わってきます。
福冨 時間とともに症状が緩和してくる患者さんが多いです。
しかし、運動誘発性の食物アレルギーは、もともと時々症状が出る、という疾患ですから、完治したという判断は極めて難しいです。
今の段階で完全に良くなったという患者さんはいません。たとえ完治するにせよ、10年、20年という長い時間が必要になるかもしれません。
神山 しかも小麦アレルギーというのがやっかいですね。
麺類やパン類が食べられないわけですから。ラーメンやパンなどは食べないように気をつけたとしても、加工食品のなかには入っていればわかりません。
とくに問題なのは外食だと思います。
外食は、原材料表示がありませんので、注意しようがない。
精神的な負担も大きいのです。
何を食べれば良いのか、常に心配しなくてはなりませんし、アナフィラキシーショックがいつ起こるともわからないので旅行にも行けない。
河岡 センターに寄せられる苦情のなかには「補償を求めたい」というものも多いのです。
損害賠償を請求したいという方が多いので、そうした方には弁護団の窓口を紹介するようにしております。
神山 焼肉のユッケで何人かの方が亡くなっていますよね。
あの問題では、厚生省の時代に衛生基準をつくっているんですが、法的拘束力のあるものではありませんでした。
今回の事件を契機に法的拘束力のある基準に替えることになったわけですが、この例のように大事にならないと、厚労省が動かないというのは非常に大きな問題だと思います。被害者が沢山出ないと国も動かないし、世のなかも騒がないという状態はおかしいですね。
――非常に悩ましい問題だと思います。この問題については、我々としてもしっかり報道していきたいと思います。今日はありがとうございました。