・『茶のしずく』問題座談会(後)~悠香は早く「謝罪と自主回収のCM告知」を!
2011年10月23日 07:00
出席者(五十音順)
『茶のしずく』石鹸被害救済東京弁護団 団長 神山 美智子 氏
(独)国民生活センター 商品テスト部 管理課長 河岡 優子 氏
国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター 福冨 友馬 氏
聞き手 データ・マックス ヘルスケア事業部 山本 剛資
<謝罪とCMをセットで>
――自主回収から現在に至るまでの対応についてはどうですか。
神山 弁護団が立ち上げた「『茶のしずく』石鹸アレルギー被害110番」に寄せられた苦情では、(悠香に問合せしても)電話がつながらない、というのが多かったですね。
それと被害は受けていないが、もう使いたくないという人の話では、「商品を送れば返金する」と言っていたのに、返金されないという苦情も随分ありました。問合せが殺到して、悠香の方でも非常に混乱して、十分な対応がとれていないかもしれませんが。
――厚労省の通知が出された直後に会社を分社化しましたから、何か隠しているんじゃないか、と疑われますよね。
神山 少なくても2010年12月にシルク由来成分に切り替えていますよね。
ですから、あの時点で加水分解コムギ末はまずいと認識していたはずです。
つまり被害者が出ることは予想がついていたわけですから、被害拡大を防ぐための対策と、被害が出た方への誠意ある対応をとるべきだったのです。
我々が被害110番を立ち上げたのは今年の8月ですから、事故を認識してから8カ月たった後も電話が通じないというのでは話になりません。
8月1日の朝、NHKが「あさイチ」という番組で被害110番を紹介しましたが、担当弁護士が9時半に行ってみたら、すでに電話が鳴り始めていたそうです。夕方まで鳴り止まないので、退出する際は、しかたなく電話線を抜いて帰宅したほどです。
――福冨先生の方から自主回収後の悠香の対応について指摘しておくことはありますか。
福冨 (健康被害について)まだ知らない人が沢山いると思いますので、まずは徹底した情報提供をやるべきでしょう。学会の特別委員会としても、悠香に対してテレビCMを流して注意喚起を呼び掛けるよう要望しました。
これは被害拡大を防ぐために絶対に必要な条件です。
――ところで悠香は、まだ謝罪していませんね。
神山 本来であれば、テレビCMなどで使用禁止と回収を告知するのと、謝罪は一体となってやらなければならない問題です。
この問題を知らず、いまだに『茶のしずく』石鹸を使っている人がいるかもしれません。
それとアレルギーと診断しても、原因が石鹸だとは思わないお医者さんもいるでしょう。
そうすると、アレルギーの治療をしながら石鹸を使い続けている人もいるかもしれません。
ある弁護士が悠香の関係者に、テレビCMによる注意喚起と回収について指摘したところ、悠香側は、「顧客名簿に基づいて注意を呼び掛ける文書を出しているので、テレビCMについてはやらない」と、答えたそうです。
注意文書を出しても、まだ十分に行きわたっていないという事実を悠香は認識していません。
福冨 おっしゃる通り、一人でも知らない人がいれば行きわたっていないということです。
アナフィラキシーという死に至るリスクのある重篤な疾患ですから、一人でも知らない人がいるということは、一歩間違えば死亡事故につながる重大な問題なのです。
今は何の症状がなくても、時間とともに発症する場合だってあるのです。
メーカーは自主回収を決めたわけですから、徹底してやらないと筋が通りません。
――悠香には、社会的責任の大きさをもっと自覚してほしいと思いますが、その一方で、この問題を報じるメディア側の扱いも小さかったりして、なかなか社会に認識されないという問題があります。この点についてはどのようにお考えですか。
河岡 新聞はけっこう取り上げていましたが、テレビについては積極的に報道したという記憶はあまりありません。
ご指摘の通り、もっと報道していただきたいですね。
当センターに寄せられる事例を見ると、近所に買い物に行く途中だとか、通勤途中で、アレルギーショックでばったり倒れているケースもあるんです。私どもは7月14日に緊急会見を開いて注意を呼びかけましたが、その後も問い合わせが後を絶ちません。
まだまだ行きわたっていないのです。
メディアで大きく取り上げられれば関心が集まりますので、マスコミにはぜひご理解頂き、協力してほしいですね。
インターネットなどには随分と情報が流れていますが、あの石鹸を使っている方は、比較的年配の方が多く、ネットを見ない人が多いので、やはりテレビの報道番組やワイドショーなどで取り上げてもらうと、一気に関心が集まります。
神山 私もテレビで悠香のCMを見たことがありますが、ほとんどの購入者はテレビCMを見て買っているわけですから、そのテレビCMを使って自主回収を訴えていかないと伝わらないでしょう。広告した時と同じメディアでやらなければ伝わりません。
それと先程、話が出ました分社化についても説明責任があります。被害者のなかには、会社を潰して責任逃れをするのでは、と心配する人も多いですから、何の目的で分社化したのか、きちんと説明するべきです。
被害者の方々に、被害を補償するというのが社会的責任です。
河岡 私は商品テスト部にいるため、本来なら直接、被害者の方から相談を受けることはないのですが、今回の問題に関しては相談件数が多いこともあり、こちらの部署にも電話がかかって来るのです。
病院に行ったが納得がいく説明がなかったと言われれば、リウマチ・アレルギー情報センターのホームページに掲載されている病院を紹介したり、電話がつながらないといった相談には悠香に手紙を出すように助言したりしています。
神山 そうですよね。電話がダメなら手紙を書くことです。
どこの病院に行ったら良いかという相談もたしかに多いのです。
弁護士110番でも、受診できる病院の一覧表を見ながら、近くの病院を紹介するようにしています。
福冨 食物アレルギーは医師にとっても難しい病気なので、残念ながら、診療可能な施設はどうしても限られてきてしまいます。