・出典:東京都健康安全研究センター環境保健部環境衛生研究科
http://www.tokyo-eiken.go.jp/index-j.html
・1970年代に二度にわたる石油ショックを受けて欧米では、冷暖房費を節約するため、建築物の省エネルギー化が進められました。1980年代の初め頃から、欧米各地のいわゆる省エネビルにおいて、めまい、吐き気、頭痛、平衡感覚の失調、眼、鼻、喉の痛み、粘膜や皮膚の乾燥感、ゼイゼイする、喉が渇れるなどの呼吸器系の諸症状等、体の不調を訴える居住者からの苦情が多数、ビル所有者や国、州などの公共団体に出されるようになりました(表1)。これらの症状は、「ビル病」とか「シックビル症候群」Sick Building Syndrome(SBS)と呼ばれています。日本では「シックハウス症候群」という言葉が一般的になっていますが、これは「シックビル症候群」に倣った和製英語で、住宅(ハウス)における「シックビル症候群」であることをわかるようにしたためと思われます。
SBSは、原因としての当該建築物の換気不足、各種汚染質(単一または複数)の発生量の増大がベースにあって、それらがその他の物理化学的要因や心理的要因と結びついた時、様々な症状として表れます。
日本では、1970年に建築物の衛生的環境の確保に関する法律(ビル衛生管理法)が定められ、空気環境については表2に示す6項目の管理基準が決められました。さらに、必要換気量の規定が設けられており、欧米のような大きな問題には至っておりません。しかし、化学物質を含む新建材が多用される最近の新築ビルでは、SBS問題がまったくないわけではなく、常に換気に留意する必要があります。
表1. シックビル症候群で訴えられた症状(米国のビル115件)
症 状 症状を示したビルの件数
目の刺激 81
喉の刺激 71
頭痛 67
疲労感 53
鼻づまり 51
皮膚の刺激 38
息切れ 33
異臭感 31
咳 24
めまい 22
吐き気 15
表2. 空気環境の調整に関する基準(ビル衛生管理法)
項 目 基 準 値
浮遊粉塵(粒径10μm以下のもの) 0.15mg/m3以下
一酸化炭素(CO) 10ppm以下
炭酸ガス(CO2) 1000ppm以下
温度(居室) 17℃以上28℃以下
相対湿度 40%以上70%以下
気流 0.5m/秒以下