ディーゼル排気粒子による気道炎症 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典:食品・薬品安全性研究ニュース
http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzensei.htm
・「ディーゼル排気粒子による気道炎症」
大気汚染による健康被害において,ディーゼル排気の影響が問題視されている.

ディーゼル機関の燃焼によって産生される物質の中には,ガス,半揮発性有機化合物,吸入可能な微粒子(直径 10 μm 以下の微粒子:PM10)が含まれている.

大気中の PM10 濃度の増加は,急性の呼吸器系の異常や,呼吸・循環器系障害による死亡率の増加と関連しており,例えば,1日平均の大気中 PM10 濃度が 50 μg/ 増加すると,喘息の発症が20%増加し,さらに 100 μg/ 増加すると入院患者数が,また 200 μg/ 増加すると死亡率がそれぞれ20%増加する.

ディーゼル排気に曝露されている労働者では,可逆的な肺機能の低下を伴う呼吸器症状の発生が報告されているが,このような肺機能の低下は,ディーゼル排気をフィルターに通すことで軽減することから,排気中の微粒子が関与するものと考えられている.

実験的に曝露量を調節してディーゼル排気を吸入させると,気道抵抗の増加,肺及び末梢血における炎症性の変化が認められる.

ディーゼル排気粒子(DEP)は,炭素の核をニッケルなどの微量の金属とその塩が囲んでいて,有機炭化水素を吸着しおり,これらの構成成分の多くは実験動物の肺に炎症反応を起こす.

炭素微粒子をラットに気管内投与すると,肺への好中球の浸潤を誘発し,肺胞洗浄液中の TNF-αの増加が認められる.

同じくラットにニッケルを気管内投与すると活性酸素の産生を伴う炎症が起き,また,炭化水素の吸入でも肺に炎症が起こる.

このように,DEP 自体が気道の炎症を起こすことが明かとなっているが, 現在のところ,人を用いて DEP 単独の影響を評価した例は報告されていない.

本研究では,ヒトに対する DEP の影響を検討するため DEP を吸入させて,呼吸曲線測定により肺機能への影響を,喀痰中の炎症マーカーから気道における炎症の程度を,さらに,活性酸素ストレスの指標として呼気中の一酸化炭素(CO)濃度を測定した.

実験は,肺及び気管支機能の正常な非喫煙健常者10人(女性7人を含む年齢28±3歳)を対象として行った.

200 μg/ の PM10 に2時間曝露し,曝露直後から4時間後まで肺機能,心拍数,血圧,呼気中 CO 濃度を測定し,メタコリン反応について調べた.

また,曝露24時間後にも同様の検査を行った.

その結果,循環器系及び肺機能には DEP吸入の影響は認められなかったが, 呼気中 CO 濃度は DEP 吸入後に増加し,最大の増加は1時間後であった.さらに,DEP への曝露4時間後では,喀痰中の好中球数及びミエロペルオキシダーゼ活性の増加が認められたが,末梢血中の炎症マーカー(P-selectin 及び IL-6)及び喀痰中の炎症マーカー(TNF-α 及び IL-8)には変化が認められなかった.

これらの結果より,高濃度の DEP への曝露が活性酸素ストレスを伴った活性化好中球の肺への浸潤を特徴とする気道の炎症を起こすことが明らかとなった.