芳香族炭化水素レセプターが媒介するベンゼンに誘導される血液毒性 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典:食品・薬品安全性研究ニュース
http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzensei.html

・芳香族炭化水素レセプターが媒介するベンゼンに誘導される血液毒性
 ベンゼンおよびその代謝物は, 骨髄細胞の減少など造血系への毒性を示し, 白血球減少症, 再生不良性貧血や白血病を誘発することが知られている.

しかし, CYP2E1 ノックアウトマウスではベンゼンの毒性は発現しないことから, 肝臓における CYP2E1 によるベンゼンの代謝が, ベンゼンの細胞毒性や遺伝毒性に必須であると考えられる.

なお, ベンゼンは CYP1A1 の基質でもあることが明らかになっている.
 ここでは,ベンゼンの血液毒性における芳香族炭化水素レセプター (AhR) の関与の有無を, AhR ワイルドタイプ (AhR+/+), ヘテロ (AhR+/-) およびホモ (AhR-/-) の3種類の遺伝子型をもつ雄マウスを用いて調べた. ベンゼンの吸入曝露は, 白血病を誘発する濃度である 300 ppm を1日6時間, 週5日の頻度で2週間行った.

その結果, AhR-/- では血液毒性は認められず, 末梢血や骨髄細胞数, 骨髄の顆粒球-マクロファージコロニー形成細胞 (CFU-GM) も変化しなかった.

また, AhR+/+ ではベンゼンの吸入に続いて一様におこる p21 の over expression も AhR-/- には見られなかった. ベンゼンの主たる2つの代謝物であるフェノール (PH) とハイドロキノン (HQ) の併合投与では, AhR-/- でも血液毒性が誘導された.
 著者らのこれまでの研究からも AhR+/+ はベンゼンに感受性であり, ベンゼンの曝露によって末梢血や骨髄の細胞数や骨髄の CFU-GM が著しく低下して血液毒性を示す.

これに対して, AhR-/- ではこれらのマーカーに変化がみられず, ベンゼンの曝露に抵抗性であった.

しかし, 前述のように, ベンゼンの代謝産物である PH と HQ の複合投与では, この抵抗性は消失した.

従って, AhR はベンゼンの代謝に機能的な役割を果たしていることが強く示唆された.
 これまで, ベンゼンが分解されたフェノール性の代謝産物が細胞毒性や遺伝毒性を引き起こすこと, そして肝臓におけるベンゼンの代謝には CYP2E1 が主要な役割をはたしていることが報告されている.

ベンゼンの代謝活性が低下している CYP2E1 ノックアウトマウスでは血液毒性は見られないことや, ワイルドタイプマウスではベンゼン曝露後 CYP2E1 の発現が亢進していることは, ベンゼンの代謝と毒性にこの酵素が重要な役割をはたしていることを反映している.

本実験でもベンゼン曝露後の AhR+/+ では肝臓中の CYP2E1 の誘導は亢進していた.

しかし, AhR-/- においても CYP2E1 の誘導亢進が認められたことから, CYP2E1 の発現制御への AhR の関与は, 単純ではないと考えられた
本研究は, AhR がベンゼンの毒性発現を仲介してることを示した.

これには異物代謝酵素 CYP2E1 の関与がある.


runより:CYP2E1とは ハロタン、エンフルラン、アセトアミノフェン、アセトン、エタノール、トルエン、ベンゼン の事です。