有機溶媒曝露と呼吸性洞性不整脈:不安障害患者との比較 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典:食品・薬品安全性研究ニュース
http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzensei.html

・有機溶媒曝露と呼吸性洞性不整脈:不安障害患者との比較
 有機溶媒に慢性的に曝露された患者や不安神経症の患者においては,共通して呼吸性洞性不整脈が抑制される,この際,最大心拍数には変化がなく,最小心拍数が増加したことから,迷走神経緊張に変化があることが示唆された.
 有機溶媒に中毒量までの曝露を受けると,情緒不安定や認識障害が起る.有機溶媒曝露による精神症状は,外傷後ストレス症候群 (PTSS) も含めた不安障害の症状に近似していることが報告されている.

情動の表現は自律神経系と強く関連している.

自律神経活動の指標としては呼吸性洞性不整脈 (RSA) がよく知られている.RSA は呼気時と吸気時の迷走神経緊張の差に起因し,不安障害の患者においては,減少することが知られているが,有機溶媒キシレン,トルエン,n-ヘキサン,スチレンに曝露した労働者では RSA が減少したという報告がある.

有機溶媒曝露で不安障害が起ることから.この RSA の低下が同じ原因による自律神経異常なのかどうかを検討した.
 有機溶媒に曝露され 2A/2B 型 (認識力・気分の障害) に該当する有機溶媒脳症を起こした28人の患者 (溶媒曝露群:平均年齢44.3歳) について,RSA のいくつかのパラメータを,3秒間吸気,3秒間呼気の規則呼吸下で30回すなわち180秒間測定し,有機溶媒曝露を受けたことがない18人の不安障害患者(不安群:平均年齢41歳),31人の健常者(対照群:平均年齢40歳)とを比較した.

平均年齢には各群間で差はなかった.

溶媒曝露群の有機溶媒への平均曝露期間は6.3年 (1日から30年) で,全員がトルエンやベンゼンの混合物への曝露を受けていた.

曝露経路は呼吸器経路が大多数であったが,併せて経皮曝露を受けているものも数例あった.

曝露から検査までの期間は平均18か月 (1週間から84か月) であった.

検査の結果,溶媒曝露群ならびに不安群では,R-R 間隔や心拍数の変動などの RSA に関するパラメータが対照群より有意に減少していたが,最大平均心拍数には有意の差がみられなかった.

一方,最小心拍数は対照群と比較して有意に高かった.

これらの所見から,RSA の抑制は,交感神経緊張の亢進に起因するものではなく (最大心拍数の増加なし),呼気時の迷走神経緊張の低下と関連があること (最小心拍数の上昇がある) が明らかとなった.
 なお,検査の1年後に溶媒曝露群のうち7人,不安群のうち11人,対照群のうち7人について再検査を実施したが,以上の結果に変化はなかった.